スベウス

キャンプ用ガソリンストーブの改良と評価

第1弾シグ ファイヤージェットの改良記事はこちら

第3弾ホエーブス725をサイレントバーナー化の記事はこちら

さあ、それでは「ガソリンで火遊びボウボウ工房」の第2弾。レア物ストーブ「ラジウス42」を惜しげも無く改造してしまうと言う荒行をご紹介しよう!

しかも最近値段が上がりつつあるスベア123Rも1つ潰してしまうと言う何とも贅沢きわまりない事態なのでございます。

何故そのような事を?? これには深あ~い訳が、、何あ~んてね。

スノーピークから出ているソロ用のチタンコッヘルに入るスベア型のガソリンストーブが欲しかっただけなのです。

今回はいつものように作り方の手順や方法を詳細に紹介するのはやめにした。

何故なら、実際にこれと同じ物を製作される方はまずいないであろう。

そんな事もあり、この手のストーブの改造一般に役立つよう、改造するにあたっての工夫や要点などをかいつまんで紹介して行く事にした。

今回の犠牲者!?はネットオークションにて16000円で落札したラジウス42と同じくネットオークションにて6000円で落札したスベア123Rだ。

まずは完成写真をご披露いたそう!

見た目は、どことなく旧東ドイツあたりで作られたイミテーションスベアみたいな「うさん臭さ」が漂う「マガイモノ風手作りストーブ」に仕上がりました。

ラジウス42の燃料タンクにスベア123Rのクリーニング機構付きのバーナー部を装着し、五徳を兼ねた風防を自作した驚愕のガソリンストーブ、ラジウス42(改)

愛称「スベウス142R」だ!!

写真左が今回犠牲になったスベア123Rの残骸、右がスベウス142R。

大きさはご覧の通りスベア123Rより若干小さい。

この「若干小さい」がミソなのでございます。

何故なら、スノーピークのソロ用コッヘル「SCS-004T/ソロセット“極”チタン」にスベア123Rを入れようとしても、あと2ミリ小さければ入るのに!と言うところで、結局は入らないのでございます(涙)

今回は、直径・高さともにコッヘルにピッタリ納まるサイズで作った。

これがスノーピークのソロ用コッヘル「SCS-004T/ソロセット“極”チタン」

これもネットオークションで棚ズレの新品を4100円で購入した物だ!

そう!今回の材料集めでのキーワードは「ネットオークション」なのです。

ねっ!スベア123Rだと、あと少しって所で入らないのがわかるでしょ?

燃料タンクがちょうどコッヘルの蓋と同じくらいの直径なんだよねぇ。

惜しい!!

 

でも、ラジウス42を改造した「スベウス142R」ならスッポリと入る。

中に入れてから蓋をすれば、もうピッタリなので、このままザックに入れて持ち歩いても中でガタつく事は無い。

ちなみに、ラジウス42の燃料タンクの直径は110タイプのガス缶と丁度同じ大きさだ。

 

さて、それでは、ここからは実際に改造した時に工夫した点などを紹介して行こう。

まずはストーブ本体の改造。

写真は全ての改造が完了した状態。

ニードル部分を含むバーナー全体と燃料タンクのキャップをスベア123Rの物と取り替えるのが主な作業だ。

言い方を変えればラジウス42の部品で使っているのは「燃料タンクだけ」である。

このバーナー部のすげ替えが今回の改造の第1の山場である。

ラジウス42のバーナー部をレンチを使って取り外す。

写真の部品が今回の改造でラジウス42から取り外してスベアの物と交換した部品。

写真には写っていないが、勿論、五徳の付いた収納缶も用無しとなった訳である。

取り外しついでに、ウィックを新しいものと交換する事にした。

写真は、どちらも取り外した古いウィックだ。

ラジウスもスベアも木綿の繊維で出来ているようだ。

ウィックは耐久性を考えガラス繊維を使う事にした。

今回は、東急ハンズ等のDIYの店で売っている極細の糸状のガラスロービングなる物を購入した。

ウィックはとにかく繊維が出来るだけ直線状でないと宜しくないようだ。

複雑に編んである物などを使うと、燃料の吸い上げがうまく行かないのか、燃焼が安定しないようである。

このように、必要な長さに切りそろえてから、真ん中で二つ折りにした状態でバナー部に押し込む。

写真ではラジウスのバーナー部に装着しようとしているが、今回の改造では、勿論スベアのバーナー部に装着する。

実際には写真の2倍くらいの量の繊維を押し込む。

装着するウィックの量は、もともと付いていたウィックの量を参考にすると良い。

 

燃料キャップはラジウスの物でも良いのだが、重量減と言う観点からスベアの物を使う事にした。

この燃料キャップには、給油時などに落としたり無くしたりしないよう、チェーンを付けた。

チェーンの先端に給油口の直径よりホンの少し大きい金属片を取り付けておき、それを燃料タンクの中に入れておけば、燃料キャップを外しても絶対に落としたり無くしたりする事は無い。

燃料キャップにチェーンを付けるには、燃料キャップのゴムパッキン類を全て外してから、チェーンをつなぐリング状の針金(銅線や真鍮線)をハンダ付けする。

その時、過剰圧力逃がし口の穴をハンダで塞いでしまわないよう注意する。

 

バーナー部の付け根にあるプリヒート皿の窪みには、ガラス繊維のウィックを巻いておく。

こうしておくと、燃料タンクからスポイトなどで吸い出した少量の燃料をこのウィックにしみ込ませてから、これに着火する事で、簡単かつ効果的なプリヒートが可能になる。

 

燃料キャップに付いている過剰圧力逃がし用の安全弁の調整は重要である。

ここがうまく調整されていないと燃焼が安定しない。

着火後、しばらくすると火力が落ちてしまう時は、たいていこの安全弁が緩んでいるか、中のゴムパッキンが劣化しているか、ゴムパッキン周辺に汚れがついているか、のどれかの場合が多い。

永く使っていると、運搬中に緩んでくる事もある為、正常な位置が一目でわかるようにマークを付けておくのが良い。

尚、あまり締め過ぎると安全装置が働かなくなるので調整は慎重かつ的確に。

 

スベア123Rとラジウス42の最大の違いは、五徳の役目を兼ねた部品の形状だろう。

ラジウス42は収納缶方式、スベア123Rは風防方式。

スベアの方が本体との一体感もあり、より小型に出来る形状だ。

小型のコッヘルに収納するには、このスベア方式の部品を作るしかない。

今回の改造の第2の山場である。

今回は0.5ミリ厚で20cmかける30cmの真鍮板を買ってきて、これを金鋏で切って作った。

スベアの風防より若干薄い(スベアは0.6mm位)が十分に丈夫で実使用には何ら支障ない。

空気穴や五徳の部分などを整形してから、筒型に巻いて、合わせ目をリベッターで固定した。

この辺りの加工は、これ以外にもいろいろな方法があるはずだ。

今回は手持ちの工具の関係や、手間をかけずに簡単に作りたいとの考えから、この方法を取った。

この燃料タンクに被せる部分はなるべく薄く仕上げる必要がある。

よってリベッターなどではうまく行かないと思う。

ここでは、お互いに手をつなぐように折り返してからペンチで加圧してカシメ、その上からハンダ付けで更に補強した。

裏側も同じようにハンダ付けで補強する。

この燃料タンクに被さる部分の寸法をタンクの直径に合わせてうまく作ると、スベア123Rにあるようなロック機構が無くとも、風防を持って持ち上げた時、本体が抜け落ちる事は無い。

風防を燃料タンクに被せた時、入り過ぎないように、位置調整の為のストッパーを付ける。

アルミのリベットを、風防を固定したい高さの位置に、適当な間隔をもって打つ。

アルミのリベット以外にも太さ3mm位のネジとナットを利用しても良かろう。

風防を装着したところ。

ストッパーの位置よりも下へは風防が入らない。

これにより、五徳面とバナーの間隔を保つ事が出来る。

リベットを打つ位置は、五徳面とバナーの間隔を考慮して決める。

小さなコッヘルをのせた時にも安定するように、五徳に太さ0.5mm位のステンレスの針金を渡して固定する。

 

燃料バルブの操作キーは、ウッカリ付けたままで使用すると、物凄く熱くなり手で触れなくなってしまう。

皮で袋状の覆いを付けておくと便利だ。

尚、この袋がスムーズに移動出来るよう、キーを取り付けるチェーンは細目のワイヤーに取り替えた。

使う時はこんな感じで、、、。

 

最後に、今回のスベア123Rのバーナー部は、ニードルバルブの閉まりが完璧では無いようで、圧が高い時に極く若干ではあるが燃料がニップルから漏れてくるようであった。

冷えてしまえば全く燃料漏れは無いのだが、それでも万が一、運搬中にザックの中に燃料が漏れだすのはイヤなので、運搬時にニップルに装着するキャップを作ってみた。

このニップル用のキャップを作るには、バーナーヘッドを取り付けるネジと同じネジ径で同じピッチの部品を探す事が、まず第一の難関である。

秋葉原の部品屋で購入したメタルコネクターの部品がピッタリであった。

この部品に、ホットメルトと言う、熱で溶かして接着する接着剤で、コルクとゴムシートを接着してニップル用のキャップを作った。

このニップル用のキャップは熱いうちに被せる訳では無いので、熱に強い材質である必要は無い。

ガソリンなどの溶剤に耐性があればプラスチック等でも十分に使用出来るであろう。

瓶の蓋とか、日頃から合う物を探しておく事が大切である。

 

例の如く実証試験を行ったのでデーターを公開しよう。

実証試験と言っても500ccの水が煮沸するまでを1回として、これを何回行えるか、と言う極く簡単な物だ。しかし、実使用に即したデーターが得られると言う点から、簡単にして優れた試験方法だと思う。

ストーブにホワイトガソリンをピッタリ100cc入れる。コッヘルには500ccの水を入れてまず水温を計測。続いてストーブの燃料タンクからスポイトで吸い上げた0.2cc程のホワイトガソリンを使ってプリヒートして着火。すぐにストーブにコッヘルをのせ時間の計測をスタート。煮沸し始めたらすぐにストーブの火を消しここまでの時間を記録する。ストーブが完全に冷えるのを待ってから以上の事を燃料タンクが空になるまで繰り返す。

以上のような条件で試験を行った。


まずは「SCS-004T/ソロセット“極”チタン」だ。

鍋底の直径9.4cm、ラーメンが1個作れるギリギリの大きさのコッヘルであり、単独テント泊山行のメインクッカーとして使用出来る最小の物であろう。

付属の蓋は使用せず終始開放の状態で使用した。

炎の大きさが常にコッヘル底面の大きさに合うようニードルで調節しながら使った場合の試験結果である。

鍋底の直径が約9cmとかなり小さい為、炎の大きさは「ニードルを操作して絞れる限度ギリギリ」と言う状態での使用になる。

燃焼を続けていると次第に炎が大きくなる傾向にある為、そのつど適宜調節する必要がある。

回数

水温

沸騰までの時間

1回目

22.5度

8分55秒

2回目

23.0度

9分ジャスト

3回目

23.0度

9分ジャスト

4回目

22.0度

9分10秒

5回目

23.0度

8分50秒

6回目

24.0度

8分45秒

7回目

23.0度

8分50秒

8回目

25.0度

8分40秒

9回目

燃料切れにより着火できず


次は、着火したらニードルは常に最大火力の位置で固定したままで使った場合の試験結果である。

写真のように、炎が鍋底からかなり大きくはみ出してコッヘル壁面に立ち上る。

回数

水温

沸騰までの時間

1回目

24.0度

6分20秒

2回目

22.0度

6分25秒

3回目

23.0度

6分25秒

4回目

21.0度

6分35秒

5回目

23.0度

6分20秒

6回目

23.5度

6分10秒

7回目

23.0度

6分30秒

8回目

21.0度

7分05秒

9回目

燃料切れにより着火できず


続いて、容量900mlの「エバニュー チタンクッカー深型M」だ。

鍋底の直径11cm、このコッヘルは単独テント泊山行でのクッカーとしては最も一般的な大きさの物だと思う。最大火力時には炎が鍋底から若干外にはみ出す。

付属の蓋は使用せず終始開放の状態で、また、ニードル操作はせず常に最大火力での使用である。

回数

水温

沸騰までの時間

1回目

23.5度

6分05秒

2回目

23.0度

6分10秒

3回目

23.5度

6分ジャスト

4回目

23.0度

6分10秒

5回目

23.5度

6分05秒

6回目

22.0度

6分10秒

7回目

24.0度

6分ジャスト

8回目

23.0度

6分05秒

9回目

3分間燃焼の後、燃料切れ


ウィッシュボーンと言うメーカーから出ているチタンコッヘルだ。

鍋底の直径13cm、容量1000ml、見ての通り深型ではない。最大火力時でも炎は鍋底からほんの少しはみ出す程度だ。

付属の蓋は使用せず終始開放の状態で、また、ニードル操作はせず常に最大火力での使用である。

回数

水温

沸騰までの時間

1回目

20.0度

5分50秒

2回目

24.0度

5分40秒

3回目

20.0度

5分55秒

4回目

23.0度

5分30秒

5回目

22.5度

5分40秒

6回目

23.0度

5分25秒

7回目

21.0度

5分35秒

8回目

20.0度

5分30秒

9回目

20.5度

5分25秒

10回目

2分間燃焼の後、燃料切れ


以上の実証試験の結果より、100ccの燃料にて、火力最小の状態では約71分強、火力最大の状態で約51分強の燃焼が可能であった。湯が沸くまでの時間は、水温、風の状態、コッヘルの形状や材質、それとバーナーの燃焼状態によって違いが出る為、参考程度であろう。ちなみに、今回の試験はすべて無風状態の室内で行った。

コッヘルは同じ物を使い、鍋底の大きさに合わせて火力調整を行った場合と、常に火力最大の場合では、「同じ量の燃料で燃焼可能な時間」は変化するが「同じ量の燃料で湯を沸かす事が出来る回数」は変らない、別の言い方をすれば「使った燃料の総量に対して沸かす事が出来る水の総量は変らない」と言う結果になった。これは、炎の大きさを変えても良好な燃焼をしている限り「燃料の単位量あたりの発熱量」は変らない、と言う事に起因しているのだろうか? となれば燃費を向上させるには「炎の熱をいかに効率良く水に伝えるか」が重要であろう。

炎の強さは同じにして、鍋底の面積を変えての試験では、面積が広い方が湯が早く沸くと言う結果が出た。別の言い方をすれば、鍋底の面積は広い方が「同じ量の燃料でより多くのお湯を沸かす事が出来る」と言う事だ。今回の実証試験では100ccのホワイトガソリンを使用してソロ用の超小型コッヘルで4リットル、鍋底がやや大きめのコッヘルで4.5リットル強の湯が沸せると言う結果が出た。携帯性との兼ね合いになろうが、鍋底は出来るだけバーナーの炎の大きさに適合した物が良いのであろう。登山用の、特に小型のストーブの中には五徳の大きさが必ずしも炎の大きさとつり合っていない物も見受ける。燃費を考えるならコッヘルの大きさは五徳に合わせるのでは無く「炎に合わせろ」と言う事か。今後、機会があればチタン、ステンレス、アルミなど、材質別の実証試験なども行ってみたい。

尚、スベア123Rとチタンコッヘルを使用しての「ラーメンを何回作れるか?」と言う実証試験も「ガソリンで火遊びボウボウ工房 第1弾」の方で行っているので興味がある方はご覧になって下さい。

ストーブの燃料消費量の把握は登山の時、特に山行が長期に及ぶ時は非常に重要であろう。暇な時に、登山で常用するコッヘルとストーブを使った実証試験を行っておく事は、たとえそれが大雑把なデーターであっても必ず役に立つはずである。

2008 yukitan@attglobal.net

 




その後、いくつかの改良を施したので紹介しよう。これらの改良のうち「着脱式の熱遮蔽板」と「着脱式の風防」は今回紹介しているストーブ以外にも様々なストーブに応用可能だ。

まずは熱遮蔽板。

このストーブを作ってから早1年以上が過ぎ、実際に室内でコーヒーを沸かすために数えきれないほどの回数使ってみた。

熱遮蔽板が無い状態でも過熱による異常燃焼や燃料タンクの過熱による安全弁の動作等は今のところ起きてはいない。

しかし、心配性の私としてはいわゆるお守り的な意味も込め、着脱式の熱遮蔽板を付け加える事にした。

こちらは「ガソリンで火遊びボウボウ工房 第1弾」の方で紹介しているスベア123R用に作ったヒートシールド。

ちなみにスベア123Rの場合、製品に付属するゴトクが付いたウインドシールドをそのまま使っているなら、このウインドシールドに熱遮蔽板が付いているので何ら心配ない。

しかし、私の場合はこれを取り去る改造を施して使っているので一応スベア123Rの熱遮蔽板も作ってみた訳だ。

ちなみにウインドシールドから熱遮蔽板を取り去った状態で約8年間使って来たが問題が起きた事は一度も無い。

熱遮蔽板のほとんどの部分を取り去ってしまった私のスベア123R。取り去ると言っても完全に取り去ってしまうとウインドシールドの強度がガタ落ちになってしまうので少なくとも周辺に少しは残しておく必要がある。それでも使っているうちに改良に改良が進み現在はほとんど数ミリを残して削り取られてしまった。

なぜこのようになってしまったのか、、、。

それは、このようにテント泊登山での食事に使う小物一式を詰め込んでから、これを容量900ccの深型コッヘルに収納して持ち歩くためである。

詳しくは「ガソリンで火遊びボウボウ工房 第1弾」の方で紹介しているのでそちらをご覧あれ。

熱遮蔽板の作り方は簡単。

缶ビール等のアルミ缶の缶底を切り取ってペンチを使って形を整えてから必要な位置に穴を開けるだけだ。

アルミ缶は普通のハサミで簡単に切り取る事が出来る。

バーナーヘッドを付ける前に熱遮蔽板を取り付け、、、。

バーナーヘッドをねじ込めば熱遮蔽板はシッカリと固定される。

こんな感じになり、製品に元から付いている熱遮蔽板と同じ効果が期待出来る。

こちらは、今回紹介しているラジウス42を改造したストーブに取り付けた例。

良好な熱遮断効果が確認できた。

収納する時は取り外した熱遮蔽板をコッヘルに入れ、その後、ストーブを収納すれば良い。

スベア123Rやラジウス42の燃料タンクの底は大きく窪んでいるため、この窪みのスペースに熱遮蔽板が収納でき都合が良い。

もちろん、私のように小物等をゴテゴテ詰め込まないのなら熱遮蔽板は取り付けたままでも収納可能だ。

 

今回紹介しているラジウス42を改造したストーブの風防にはスベア123Rにあるようなロック機構が付いていない。

前述の様にこのままでも簡単に抜け落ちる事は無いのだが、それでも使い続けているうちに緩くなって、、、スッポ抜けて本体だけ谷底にコロコロ、、、何て事になるのはイヤなので簡単なロック機構を付ける事にした。

スベア123Rのように燃料タンクにロックの為の突起を付けるのは難しいので、燃料タンクの蓋の部分を利用してロックする工夫をした。

真鍮板で作った部品をアルミリベット1本で取り付けた上、更にがたつき防止の為ハンダ付けして固定した。

使い方は簡単。

風防を本体に被せてから、、、。

反時計方向にほんの少し回転させて燃料タンクの蓋の下にある隙間に噛み合わせるだけだ。

ロックされるのはこの部分1箇所のみだが、風防は燃料タンクに対してかなりピッタリに作ってあるので、ここ1箇所のロックだけでも写真のような状態にロックしてしまうと手で引き抜こうとしても簡単には抜けない程に固定される。

 

山岳テント泊で使うストーブは使い慣れていると言う事もあり専らスベア123Rなのだが、強風下でも立ち消えせず尚且つコッヘルに効率良く熱が伝わるようにと考え簡単な着脱式の風防を作り、それを取り付ける機構をウインドシールドに追加した。

この風防は数年前に作ったものであり、実際のテント泊山行でかなりの回数つかっているため熱による変色はしているがいまだに健在だ。

着脱式の風防は厚み0.1mm程のチタンの薄板で作った。

チタンの薄板は東急ハンズ等の有名DIY店で購入可能だ。

これくらい薄いと紙を切るための普通のハサミや事務用のパンチ等で簡単に加工する事が出来る。

必要な箇所に事務用のパンチで穴を開ける。

穴の位置は自分が使うコッヘルの大きさに合わせて開ける。

矢印の2箇所に着脱式の風防を取り付けるための突起を作る。

今回は真鍮製の六角ナットを加工したものをリベットで取り付けた。

突起部分のアップ。

突起の頭の部分を「釘の頭」のような形状になるよう工夫する事がポイントだ。

スプリングワッシャーと頭の部分が大きめのネジを利用しても作れそうだ。

尚、この突起は火力調整キーの操作の邪魔にならない位置に風防が取り付けできるように考えて位置決めする。

取り付けた風防がうかつに外れないようにロックする部品も作る。

ウインドシールドに小穴を開け、細いワイヤーと圧着端子を利用して左の写真のように作り付ける。

こうする事でこのワイヤーの紛失を防止出来る。

風防を取り付ける時には、左の写真のように、まず、風防の穴を突起に通してから、、、

ワイヤーのループをリベットの頭にはめ込む。

ワイヤーの弾性でワイヤーのループがリベットの頭に固定されるので、結果、風防も固定される訳だ。

風防の穴の位置を選ぶと数種類の大きさのコッヘルに対応可能だ。

左の写真はこのストーブ、スベア123Rを入れるコンテナ兼コッヘルとして使っている容量900ccのチタン製の深型コッヘルを使う時の例だ。

写真に向かって風は左側から吹いてくる状態での使用状況を再現している。この状態で火力調整キーは右側から差し込まれる。

これは容量1400ccのチタン製の深型コッヘルを使う時の例だ。

このように穴の位置は自分が使うと想定するコッヘルに合わせて数カ所開けておくのが良い。

尚、チタンの耐熱性はかなりのもので、たとえ0.1mmの薄さと言えどもバーナーの炎で長時間あおられたくらいでは変色はすれど溶けたり変質したりする事は無いようだ。

 

今回の改良とは関係ないが、スベア123Rやラジウス42等の自己加圧型ガソリンストーブの燃料に付いて実験してみたので記述する。

これらのストーブはホワイトガソリンの使用をたてまえに製造されているが、自動車燃料用のガソリンも問題なく使える事は良く知られた事実だ。

では、灯油は使えるか?

実験してみたのだが、100パーセントの灯油を入れた場合、どんなに念入りにプリヒートしたところで間違い無く青い炎では燃焼しない、、、どころか、巨大なロウソクのごとくオレンジの炎をメラメラと立ち上げてアッと言う間に真っ黒けのススだらけになってしまう。

ところで、灯油とガソリンは原油を蒸留塔で熱してその沸点の違いを利用して分離精製される訳だ。同じ原料から作られているゆえに簡単かつ完全に混合する事も出来る。

そこで、ホワイトガソリンに少しづつ灯油を混ぜて行きどの位の混合比率まで燃料として使用可能か、と言う実験をしてみた。

灯油を20パーセント混ぜた場合では、ほとんどホワイトガソリンだけの場合と同じように燃焼した。プリヒートもホワイトガソリンの場合と同じ感覚で行ってOKであった。

灯油50パーセントの場合では、プリヒートを通常より長めに行えば青い炎で正常に燃焼した。但し、最大火力で燃焼しているぶんには問題は起らないが火力を絞った状態で5分間ほど経つとオレンジ色の炎が時おり立ち上がる現象が見られた。火力が落ちた事により灯油の気化効率が落ちた結果だと推察する。

灯油の比率50パーセント以上では最大火力時でも時おり不安定になり息継ぎするようにオレンジ色の炎を吹き上げた。

灯油を混合すると消火時に炎がすぐに消えずにオレンジ色の炎が残りつつ数秒間をかけて徐々に消える、と言う現象が見られた。この現象は灯油をより多く混合した時に顕著に現れた。原因は特定できなかったが実使用において支障は感じられない。

灯油を50パーセント混合した時には火力がガソリンのみの時よりあきらかに強くなっている(炎が大きくなっている)のが目視でも確認できた。よって、20パーセントの時でも確実にカロリーアップしていると推察する。

以上の結果からスベア123Rタイプの自己加圧型ガソリンストーブの燃料としてホワイトガソリンに灯油を20パーセントくらい混合しても問題なく使用可能なようだ。カロリーアップするための手法としても応用できそうだ。但し、ストーブによる固体差もかなり有ろうから、その結果を保証するものではない。あくまでも「興味本意の実験」である。

2009 yukitan@attglobal.net

リターン