カッコイイけどいまいち評判の良くないシグ ファイヤージェットをついに買ってしまった!。スイス陸軍正式採用の正真正銘の軍用ストーブと言うキャッチフレーズに負けた!!。使ってみるとこれがなかなか使いづらい!。こんなんでスイスは永世中立たもてんのか!?。まっ、スイスの人はご飯炊きませんからね。しかし、僕は日本人!。山でもやっぱりご飯です。炊けぬなら炊かせて見せようファイヤージェット。しかし、今回は火力調整に関する改良ではありません。炊かせて下さいファイヤージェット。誰かー。ファイヤージェットでご飯炊く方法教えてー!!!。と、情けない出だしで始まりました火遊びぼうぼう工房。M1950ミリタリーストーブ、コールマン ピークワン442、オプティマス スベア123、と使い倒して来た自称ストーブマニアのこの僕が最後につかんだダミアンストーブ!、シグ ファイヤージェットを少しでも使いやすくして、このストーブが嫌いにならないように頑張ろうと言う健気な企画です。今回はコッヘルの取っ手に炎が当たらないようにするのと、風防を兼ねた五徳を閉じた状態でも使えるようにする事、それとマグカップなどの小さな器も直接かけられる様にする改良です。大した工具も労力も必要なく出来るので誰でもトライ出来ます。また、スベアと付帯道具一式をコッヘルに入れて持ち歩く為の改良も掲載しています。

シグ ファイヤージェットにコッヘルをかけると左の写真のように炎が取っ手をあおって取っ手がとっても熱くなる事があります。このストーブは小型軽量のため、使用するコッヘルもソロ用の小型のものが多いと思います。小さなコッヘルほどこの傾向が強いようです。これはMSR等のバーナー部にたいした覆いの無いタイプのストーブ全般に起こりうる問題です。今回の改良はシグ ファイヤージェットのみならず、似たような形状のバーナー部を持つストーブ全般に応用可能なものです。

取っ手部分の拡大写真です。バーナーの炎が取っ手にかかっているのが確認できます。この写真のコッヘルは容量900ミリリットルのチタン製コッヘルです。このコッヘルではどの位置にずらしても取っ手に炎がかかってしまい数秒で取っ手下部が赤熱し、とても素手では触れない状態になってしまいます。そこで、この炎を遮へいするための簡単な防護壁を設けることにしました。防護壁は工作のやりやすさと重量の増加を極力抑える事を考え取っ手側の一部分のみに設けることにしました。

防護壁を設けた後の炎の状態です。上の写真と比べて炎が取っ手にかかっていないのが確認できると思います。この状態で10分間加熱しても取っ手は素手で触れる状態でした。ステンレス製コッヘルでも試験しましたが同じように素手で触ることが出来ました。多分、アルミ製コッヘルでもなべ底からの熱伝導が考慮されている構造のものなら大丈夫だと思います。直接炎が取っ手に当たらないためにほとんどのコッヘルが手袋無しで使えます。

防護壁を取付けた状態です。0.2ミリ程の極く薄いステンレス板を一本のリベットまたはネジで取付けます。取付け位置は五徳の開閉に支障が出ない位置で極力大きな物が効果的です。取付け高さは五徳の上端より上に飛び出さないように(飛び出すとコッヘルを置くとき支障が出ます)それでいて五徳の上端より下がりすぎない高さ(コッヘルを置いたときコッヘル底面と防護壁の間にすき間があるとそこから炎が漏れ出してしまう)に取付けます。写真くらいの位置、大きさが最も良いようです。

取付け部分の拡大写真です。黄色い矢印部分が取付けの為のリベット。リベットが使えないときは3ミリ位の太さのステンレス製ネジとナットでも構いません。ドリルで火皿と部材に穴を開けて取付けます。部材は薄いので難なく開きますが火皿は厚みが1ミリ程あるので穴開けはチョット骨かもしれません。穴位置は写真でも分かるように部材中心よりやや右側寄りに開けるのかポイントです。こうすると、特にネジで止めた場合、ネジの頭の飛び出しが邪魔になり五徳の収納に支障が出るのを少しでも防ぐことが出来ます。赤い矢印部分は取付けた部材のぐらつきや回転を防ぐための押えです。防護壁の上部が波形になっているのは、今回の改良の為に入手した部材に始めからこのような加工がなされていただけで、もちろんただの平板でも良いわけです。

反対側(バーナーの側)から見た取付け状態です。赤い矢印部分がぐらつきを防ぐための押えの部分です。上の写真と共に見ると構造が分かると思います。部材のステンレス版に切れ込みを入れて折り曲げて押えとしてあるだけです。リベット止めが一箇所のためこのような押えを設けました。二箇所をリベット止めすればこの押えは必要ないと思います。リベット一個分重くなりますが。写真の2つの矢印の中間、左側の矢印寄りにある銀色のボッチがリベットです。ネジ止めの場合には、この部分はナットを取付けます。

押えの部分の拡大写真です。これが無いとリベット止め一箇所のみの場合、部材がぐらついてしまいます。

今回の改良に使用した部材です。100円ショップ等で売られている野菜やパイ生地を切り抜くための調理用具です。3個入りで100円でした。要は薄いステンレス板がほんの少し(3センチかける6センチくらい)あれば良いわけです。材質は必ずステンレスである必要があります。防護壁は直接炎にあぶられてかなり高温になります。アルミでは溶けてしまいますし鉄や真鍮や銅は酸化して直に腐食劣化してしまいます。またステンレスでもあまり厚いものは(0.5ミリ以上)加工がしづらくてお奨め出来ません。その点、左の写真の物は安物だけに薄くて(0.2ミリくらい)ハサミで切ることが出来て加工もらくちんです。ちなみにステンレス製なら0.1ミリ厚でも耐熱および耐強度的には十分に実用になります。

必要な工具は左の様なものです。ハンドドリルは乾電池式の物でも何とかいけますが、出来れば100ボルト式の小型のものが欲しいです。ホームセンターでかなり安く入手できると思います。一番安いので十分です。むしろドリルの刃は良いものを求めることをお奨めします。穴開けはドリルではなくドリルの刃で行うのですから。ドリルの刃は使用するリベットやネジに適合した物を選びます。今回は直径3ミリ前後のリベットかネジを使用しますので、リベットもしくはネジを用意してからそれに見合った直径のドリルの刃を用意します。ドリルの刃はステンレス用等と言って売られている物ならどれでも大丈夫です。穴を一つ開けるだけなので鉄板用でも取りあえず使えます。あと用意するのは、ブリキが切れるハサミ。これもホームセンター等で売ってます。

もう一つ、あればよいのがプラインドリベットを打つためのリベッターです。でもこの工具は正直言って高価です。プラインドリベットとは裏側から叩かなくとも表側からだけの操作でリベットが打てる便利な道具です。専用のリベットとセットで使用します。今回の改良にはどうしても必要な物ではありません。リベットの代わりに3ミリ位のネジとナットでもOKです。注意するのはここでも材質はステンレスの物を選ぶと言う事です。

ネジとナットで止める場合には、ネジの頭がなるべく飛び出していないものを選びます。左の写真で一番左のネジは頭がモッコリと飛び出していますが、このようなものは使用できません。左の写真で真ん中の物と右はじの物は比較的頭の飛び出しが少ないので使用できます。頭が飛びだしていると五徳を収納する時、ネジの頭にぶつかってしまい、きちんと収納できなくなってしまいます。

五徳を収納した状態です。赤い矢印部分が今回取付けた防護壁です。取付けネジの頭の飛び出しが防護壁の部材を含めて5ミリ以内なら、五徳は正常に収納できます。ちなみに、バーナー側の飛び出しはバーナーに当る程に飛び出していなければ問題無いようです。3センチ位の余裕はありますのでナットの飛び出し分くらいは全然大丈夫です。

取っ手に炎が当る事の防止策としてもう1案。五徳を収納したまま使用すれば、五徳が炎の防護壁の役割を果たし好都合です。それと、左の写真の様にマグカップなどのより小さな容器も直接かけられるようになるとより便利だなーと常々感じています。ちなみに、ソロ用の小型ストーブはマグカップ位の小さな容器が直接かけられる物が以外と少ないようです。後述のスベア123等もマグカップは安定して置けませんしMSR等も写真で見るかぎりマグカップ位の容器は苦手そうです。M1950等もダメです。今まで使った中ではコールマン ピークワン442くらいでしょうか、マグカップが安定して置けるのは。結構便利ですけどね、マグカップで直接お湯が沸かせるのは。

シグ ファイヤージェットは燃料パイプをつないだまま五徳を収納しようとすると左の写真のごとく、赤矢印で示した五徳がコネクタ部にぶつかり完全に収納できない。別にこのまま使えばそれで良いのだが、潔癖症の僕としては納得できない。そこで、当る部分を切り取る。改良と言ってもただのそれだけ。

左の写真で赤で示した様に切り取る。ここの部材は厚みが0.5ミリ位あり、ハサミで切るのははとても無理。だからヤスリで気長にゴリゴリとやるのが一番。ハンドニブラーと言う便利な工具をお持ちなら、物の数分で切り取れますが、この工具も比較的高価なうえ一般的では無いのでホームセンターには置いていないでしょう。ハンドグラインダー等をお持ちのプロまがいの方には、こんな加工は朝飯前でしょう。でも我ら素人職人はヤスリです。ホームセンターで数百円以下で買えます。

見事切り取って燃料パイプを装着した状態で五徳を収納しましたの図。もう少し燃料パイプの形状に合わせた形で切り取りたかった。が、後の祭りか、、、。

五徳を収納した状態で着火した様子。赤矢印の部分に防護壁が着いている。この状態では取付けた防護壁は何の役にも立っていない。ちなみに、五徳を収納した状態で数十分燃焼したが特に問題が発生することは無いようだ。コッヘルを乗せての燃焼試験もしたが問題は発生しなかった。防護壁を取付ける改良をしないのなら、取っ手の過熱防止の点からもソロ用の小型のコッヘルを使用する時は、五徳は閉じた状態で使った方が良いと感じられた。但し、熱効率の点では五徳を開いて使ったほうが良いようである。尚、中型以上のコッヘルを使用する時は安定性の点からも五徳は開いて使用すべきだ。やはり防護壁を取付け五徳は開いて使うのが熱効率や取っ手加熱防止の点からはベストな方法だと思う。

マグカップなどの小型の容器を使用できるようにする改良は、左の写真の黄色矢印の部分を写真のごとく90度曲げる(本来はこの部分は曲がっていない)。これによりマグカップなどの小さな容器を五徳を閉じた状態で置くことが出来るようになる。赤い矢印は取付けた防護壁。マグカップを置くに当っては、この部分はなんら関係ない。

マグカップは左の写真で黄色い丸で示した位置に置くのが一番安定する様だ。ちなみに、曲げた五徳の部分3箇所に均等にカップをかける位置で置こうとしてはいけない。ちょっとした衝撃でズッコケて間違いなくカップはひっくり返る。左のような置き位置は、見た目は不安定な様だが実際はかなり安定している。この置き方は五徳の端を90度曲げないとゼッタイに出来ない。尚、五徳を開いた状態では、どうあがいてもマグカップを安定して置くことは出来ない。ちなみにマグカップ等の小型の容器はことのほか熱効率が悪いので、より大型のコッヘル等が使用できる時はそちらを使う事をお奨めします。他の容器がふさがっている時など、応急的な場合のみにとどめるのが良いと思います。

シグ ファイヤージェットの改良の最後に、改良後の燃焼状態の写真を掲載します。防護壁側に炎が立ち上る傾向がある様ですが、燃焼自体に異常は認められません。改良後、実際の燃焼時間で数10時間使用しましたが器具の異常加熱なども無く快適です。比較的簡単に出来る改良としては成功だと思います。バックパッキングで行くソロキャンパーとしてはシグ ファイヤージェットは小型軽量でとても良いストーブだと思います。ご飯さえうまく炊ければ、、、。

五徳を開いて使った場合と閉じて使った場合の熱効率の差はどのくらいあるのか?。簡単な実験をしてみました。900ミリリットルの容量のチタン製コッヘルに(一番最初の写真で火のついたファイヤージェットに乗っかっているやつです)700ミリリットルの水を入れ火力最大で加熱し何分で沸騰するかを計って見ました。水温22度、外気温22度、無風状態での実験です。五徳を開いて使った場合は5分45秒で沸騰、閉じて使った場合は9分20秒で沸騰しました。熱効率の点からは五徳は開いて使った方が良いようです。なべ底の直径が13センチ程の比較的小さなものを使ったため炎がコッヘル側面にかなり漏れでていました。そのような事も原因しているのかも知れません。また、五徳を閉じた状態で300ミリリットルの容量のチタン製マグカップに250ミリリットル水を入れた物のでも実験して見ました。こちらは6分50秒で沸騰しました。水の量の割には沸きが遅いです。底面積が少ないのでこんなものなのでしょうか。取りあえずお湯が沸かせると言う程度に考えたほうが良さそうです。やはりコッヘルが使える時は、そちらを使ったほうが良いと言うことでしょう。また、底面積は出来るだけ大きな物の方が熱効率が良いようです。尚、チタン製の器はチタンの熱伝導率がステンレス並みに良くない為、素材が薄く出来ているいとは言え、お湯の沸きはアルミに比べて遅いような気がする。

オプティマスのスベアはシグ ファイヤージェットを購入する前まで使っていたストーブです。小型で燃費も良く(但し火力がやや弱い)故障の無い信頼性の高いストーブだと思います。オール真鍮製と言う事もあって小型の割にずっしりと重たい感じがします。(それが原因でダミアンストーブ、シグ ファイヤージェットに乗り換えた)(しかし、ファイヤージェットは登山では使い物にならず、結局今でも登山にはスベアを使っている)小型のコッヘルに本体その他一式が収納できるのも魅力です。国産のストーブメーカーなどからガスボンベがスッポリと入るコッヘルが売り出されていますが、あれにスベアはあつらえたかのようにピッタリと収まるのです。僕はキャンプの時は左の写真の様な一式を収納して持ち歩いてました。これだけの物をスベアを一回り大きくした位のコッヘルに入れるのですから若干工夫が必要です。

工夫と言っても大した事ではありません。バーナー部を取り外して収納すること(バーナー部はネジ式に取付けられており工具無しで手で回すだけで簡単に外せる)と、風防と五徳を兼ねた部品の中仕切りの穴を左の写真のような形に拡張するだけです。穴の拡張はハンドニブラー等の工具が無い場合はヤスリで気長にゴリゴリやるか、金ノコで一気に切り取るかです。こうして拡張した穴に折り畳み式のスプーンやフォーク、プリヒート用に燃料をタンクから吸い取るスポイト等を突っ込みます。要は各人、収納したい物の形を考えて拡張する穴の形を決めます。尚、この中仕切りを全て取り去ってしまうとこの部品の強度がガクンと落ちてしまいNGだと思います。でも、もしかしたらそれでも行けちゃうかも知れません。誰か試してみて下さい。

全てを収納した状態です。収納したと言うより詰め込んだと言った感じです。立体パズルのようにかなり考えて入れないときちんとフタが閉まりません。左の写真の状態にスベア付属のアルミパンをかぶせてからコッヘルのフタをします。スベアに満タンに燃料を入れておけば2泊位のキャンプはこれとラーメン4個、ボンカレー2個とお米2合だけで行けます。シグ ファイヤージェットにしてからも同じようなセットを一式コッヘルに詰め込んで使っています。シグ ファイヤージェットがスベアより約200グラム軽いため別に300ミリリットルの燃料タンクを持参してもシグ ファイヤージェットの方が若干軽いようです。しかし、バックパッキングのすき間が無い場合で比較的短期間のキャンプの場合はスベアの方が燃料タンクがいらない分有利です。

このスベアもマグカップのような小型の容器を直接かけるのは苦手なようです。付属の五徳を内側に向けてもほんのチョットしかマグカップにかからず、チョットした衝撃でズッコケてひっくり返ってしまいます。そこで、マグカップを安定して置ける工夫をしてみました。

何のことはない、左の写真の様な物をステンレスの針金で作るだけです。これを横向きにした五徳に引っかけて使うのです。コッヘルでご飯を炊いた時など、マグカップでスープやみそ汁が作れて重宝します。バックパッキングのソロキャンプの時はコッヘル一つとコッヘルのフタのフライパン、マグカップ一つの三つの食器しか持って行きませんので、いろいろ使い回して行く必要はあると思います。

最後に、スベアはプリヒートが必要不可欠ですが、メーカーではメタ等の専用燃料でのプリヒートを勧めています。が、しかし、荷物はなるべく減らしたいもの、そこで燃料タンクのガソリンをスポイトで極く少量吸い上げてバーナー根元のプリヒート皿にたらしてやればOKです。スポイトは文房具屋で売っている樹脂で出来たインク用の物で十分ですが、僕はホカベン等に付いている醤油の入れ物の先にシリコンチューブをねじ込んだ物を作って使っています。このほうが文房具屋で売っている物より数段小型になります。黒い線までガソリンを吸い上げて使用します。魚の形や豚の形の入れ物で作ると楽しいかも。尚、スベアは火力調整が2段階くらいは出来る(うまくやると強中弱の3段階は行く)のでご飯を炊くことが出来ます。弱火にしても火力が比較的安定している所がダミアンストーブ、シグ ファイヤージェットより数段すぐれている部分です。チタンか何かで作った超軽量のスベア売り出してくれませんかねー。オプティマス様。

スベアは発熱量1300キロカロリー。現在流通している多くのストーブが2000から2500キロカロリーだから大分熱量が少ないよう感じられる。では実際どんなもんか。実用的熱量測定テストとしてラーメンを作ってみた!?。スベアに燃料を満タンに入れ、900ミリリットルの容量のチタン製コッヘルに500ミリリットルの水を入れサッポロ一番塩ラーメンを作る。水温と外気温、出来るまでの時間と満タンの燃料で幾つ作れるかを記録する。尚、ここでの調理時間とはバーナーに点火してから調理が終わり消火するまでの実燃焼時間の事です。結果は以下の通りです。

実験例その1、実験した季節、冬(1月)、燃料満タンから開始、実験時はいずれも無風

気温1度

水温6度

調理時間8分35秒

1個目

燃料の残あり

気温2度

水温4度

調理時間9分30秒

2個目

燃料の残あり

気温1度

水温2度

調理時間9分50秒

3個目

燃料の残あり

気温0度

水温2度

調理時間9分45秒

4個目

燃料の残あり

気温2度

水温4度

調理時間9分10秒

5個目

燃料の残極少

実験例その2、実験した季節、初夏(6月)、燃料満タンから開始、実験時はいずれも無風

気温20度

水温18度

調理時間7分05秒

1個目

燃料の残あり

気温24度

水温20度

調理時間6分45秒

2個目

燃料の残あり

気温23度

水温21度

調理時間6分30秒

3個目

燃料の残あり

気温25度

水温22度

調理時間6分30秒

4個目

燃料の残あり

気温24度

水温21度

調理時間6分45秒

5個目

燃料の残あり

気温26度

水温24度

調理時間6分25秒

6個目

燃料の残あり

気温24度

水温21度

調理時間6分35秒

7個目

燃料の残あり

気温27度

水温24度

調理時間6分25秒

8個目

燃料の残極少

上記の様な結果になりました。大雑把な実験ですが冬には5個、春秋には8個のラーメンが作れる事が実証できた訳です。調理時間を見ると満タンの燃料で約60分燃焼できるスベアのスペックに合致しているように思えます。尚、この実験にはプリヒートの為に燃料タンクより1回約0.5ccの燃料を吸い出して使用しています。スベアは燃料満タンで120ccですから、これだけの燃料で冬なら約1日半、春秋なら約2日半の食事が出来るわけです。まあ、ラーメンを食い続けることに耐えられればですが、、、。


実際の登山でスベアを使用した燃費の実証データ

その後、八ヶ岳のテント泊登山で夏冬あわせ十数回フィールドテストした。夏から秋にかけては2泊3日のテント泊登山でも燃料満タンのスベアと予備燃料タンクにSIGGの300ミリリットルのものを持てば十分いけるようだ。2泊3日の場合、山行中の燃料補給は1回のみで済んでしまう。帰宅時にはスベアの燃料タンクはほぼ空、SIGGの予備燃料タンクには約半分の燃料が残っている状態だ。スベアの燃料タンク容量は130ミリリットルなので、約260ミリリットルの燃料を使ったと言うことだ。もっとも、この時の食料はマルタイの棒ラーメンとアルファー米のみだか、、、。もっとも夏の登山はそれほど燃料に対する心配は無いだろう。燃料が無くても水は手に入るし、樹林帯なら、雨さえ無ければ焚き火も出来るし、、、。やはり燃料が心配になるのは積雪期の登山であろう。積雪期の、それも厳冬期のテント泊登山では、スベアに満タンにした燃料が、夕食と次の日の朝食の2回の使用で無くなってしまう事がほとんどだ。雪山では雪を溶かして水作りをするのにかなりの燃料が必要になる。たとえば、夕食時は1.7リットルの水を作り、1リットルを飲み水として確保、残りの0.7リットルで食事を作る。朝食時には夕食時に作った飲み水のあまりを加えて1.7リットルになるように水を作り、0.7リットルで食事を作る。残りの1リットルを飲み水として携帯する。このようなやり方で、夕食と次の日の朝食の2回の使用で、スベアに満タンにした燃料が空になるわけである。厳冬期の2泊3日のテント泊登山には予備燃料タンクとしてオプティマス製の600ミリリットルの物を持って行くのだが、帰宅時には半分以上は残っていることが多い。この時の食料もマルタイの棒ラーメンとアルファー米のみである(^_^;)。ちなみに食料が棒ラーメンとアルファー米のみの場合、調理に使用する水は棒ラーメンが500ミリリットル、アルファー米がうるち米ベースの物が160ミリリットル、もち米ベースの物(所謂おこわ系のもの)が110ミリリットルである。1食にアルファー米と棒ラーメン各1を食べるとして600から700ミリリットルの水を必要とする。

話がストーブの燃費から食料の事にそれてしまったが、それたついでに、もう少し食料について書いてみる。少ない水で調理可能で高カロリー、しかも軽量でかさ張らないという点からも、登山食はマルタイの棒ラーメンとアルファー米がベストである。願わくばマルタイの棒ラーメンはもう少しバリエーションを増やして欲しい。醤油味とトンコツ味があるのだから、せめて塩と味噌くらいはあってもよさそうだ。ケンミンの焼きビーフンも登山食にはなかなか良いチョイスだ。こちらは調理用の水は1食分200ミリリットルで済む。水の無い稜線上でのテント泊の時などは、焼きビーフンともち米ベースのアルファー米なら調理用の水は1食310ミリリットルで足りる。尚、このような質素な食糧事情の場合は、一日一回のビタミン剤によるビタミン補給は必須である。また、行動食はミネラルの補給やエネルギーの即効性、それと携帯性を考え、干しぶどうを一日量50グラムのみとしている。

同じ食料であっても、燃料の消費量は調理の方法しだいで大きく異なる。燃費を良くするには少しでもストーブの燃焼時間を少なくすることだ。ラーメンなどのめん類を作るときは、湯が焼きかけたら麺を入れてしまう。完全に湯が沸騰するまでは待たないことだ。コッヘル内の水に小さな泡が出始めたら(水温は約70度くらいだろうか?)、直ぐに麺とスープなどを全て一緒に入れてしまう。その後、だいたい数分で沸騰が始まるはずである。この沸騰するまでの間に少し柔らかくなった麺をかき回してほぐしておく。沸騰が始まったら直ぐに火を止める。コッヘルに蓋をして、そのまま3分間くらい置いておく。要は沸騰した湯の余熱で調理する訳だ。いちど沸騰した湯は、たとえ厳冬期と言えども3分位でぬるま湯になってしまうことは絶対に無い。余熱で十分に調理可能である。このやり方で殆どの煮る調理が可能だ。しかもかなりの燃料節約になる。また、特にガソリンストーブを使っての調理は、なるべく一回の燃焼で全ての作業を終えるようにする事が、燃費節約の観点からは大切な事だ。なぜなら、ガソリンストーブはプリヒート時を含む着火してまもない時が、最も燃焼効率が低く燃費が悪くなるからだ。無駄な燃焼をさせずに調理作業を手際よく行うには、作業を一連のシーケンスとして自分なりに確立しておく事が大切だ。私の厳冬期での調理の流れは、まず雪を溶かして所定量の飲料水を作る。この飲料水作りでは沸騰させる必要はない。お風呂程度の湯が出来ればそれで良い。続けて調理用の水を作る。アルファー米と棒ラーメンを食べるなら、まず、双方に必要な合計量の湯を沸かす。沸いたら直ちにアルファー米のパックに必要量を入れ、続いてコッヘル内に残っている湯に、棒ラーメンとスープの素を入れて手早くかき混ぜ、棒状の麺が少し曲るようになったら火を止めて蓋をする。燃料の使用量は作る水の量で大きく異なるが、飲料水を1リットル作ったとして、スベアの場合、厳冬期において、ここまでの作業が約30分の燃焼で完了する。よって燃料使用量は約60~70ミリリットル位と言うことであろう。特に、調理用の湯が沸騰してから火を止めるまでの時間は約1分である。この辺りの作業は、かなりの手際よさを必要とする。尚、チタン製のコッヘルは熱伝導はあまり良く無いぶん、保温性が良く、上記のような余熱を利用する調理法にはうってつけであった。

以上が、八ヶ岳での一年を通して行った、フィールドテストを兼ねた実使用での実証データである。昨今、ガスストーブの性能が良くなり、登山用ストーブはガス一辺倒の感が有るが、やはり雪山も視野に入れた登山には、火力と予備燃料を含めた携帯性の点からガソリンがベストのように思う。また、そのような場合には、夏を含む無雪期であっても、使用する装備は、可能な限り冬に準拠した物を選択し、その操作に慣れておく事も重要であろう。ちなみに、スベアは狭いテントの中でも使える数少ないガソリンストーブである。そう言った点からも貴重な存在だと思う。シグ ファイヤージェットのようなセパレートタイプは軽くて良いのだが、プリヒート時の炎の立ち上がりが大きく、一人用のテント内では使用できない為、単独登山には向かないようだ。パーティーを組んでゆく登山の共同装備には良いのだろうが、ファイヤージェットでは、それ用には少し火力が弱すぎる気がする。結論として登山にはスベア、、、か、、、。やはり、、、ファイヤージェットじゃダメか、、、。

その後、ファイヤージェットはケロシン(要は石油)燃料専用ストーブとしてオートキャンプの時の湯沸かし専用機として活躍することになったそうな、、、めでたし、めでたし。

リターン