カメラとレンズの交配術
機種の異なるカメラとレンズを接続する方法
予備知識 (接続可能な諸条件に付いて)
私たち素人が、日曜工作程度の労力で異機種のカメラとレンズを接続しようとしたとき、カメラとレンズ側に必要な条件(改造可能な条件)を考えてみます。と、言っても、大した事では有りません。カメラのフランジバックがレンズのフランジバックより短いこと。これが絶対必要条件です。この条件を満たしていないとリレーレンズ無しでは無限遠までピントが合う状態で接続が出来ない、と言う事になってしまいます。リレーレンズを使用しての改造は、素人にはまず無理だと思います。また、フランジバックの条件は満たしていてもレンズのバックフォーカス(後玉から結像面までの距離)が短くカメラのミラーなどに当る場合、これも改造するには難が有ります。その他の条件として、レンズのイメージサークルがカメラの撮影面(フィルムやCCD素子)よりも大きい事。この条件を満たしていないと画像にケラレが出てしまいます。しかし、画像のケラレは使い手の考え方の問題であり、それが必ずや悪いとも言いきれません。特に写真の場合はトリミングすれば済むことですし、、。以上の条件を下記に図解します。 |
8ミリシネフィルム(スーパー&シングル) |
5.7mm X 4.1mm |
1/2インチ撮像素子(ビデオカメラ) |
6.4mm X 4.8mm |
2/3インチ撮像素子(ビデオカメラ) |
8.8mm X 6.6mm |
16ミリシネフィルム(スタンダード) |
10.3mm X 7.5mm |
1インチ撮像素子(ビデオカメラ) |
12.8mm X 9.6mm |
35ミリシネフィルム(スタンダード) |
22.0mm X 16.0mm |
ライカ判スチルカメラ(35ミリの写真) |
36.0mm X 24.0mm |
ブローニー判スチルカメラ(66判) |
56.0mm X 56.0mm |
画像のケラレに付いて
レンズのイメージサークルの制約によるケラレの問題について。画面サイズが大きく違う場合は、ケラレが出ても当然の事と諦めがつきますが、例えば、2/3インチ業務用ビデオズーム等はうまくすれば16ミリカメラに使用できそうですし、そうしたいものです。まあビデオと映画の解像度の違いからくるレンズの設計解像力の違いもあり一概に良いとは言えませんが。しかし、ビデオ用ズームの品種の多さや造りの良さ(もちろん16ミリ用はもっと造りが良いのですが)、特にショート系のズーム等は16ミリ用に品種が少ないのと、その上価格がバカ高なのを考えると、何とかビデオ用を使用したいと考えるのは当然です。ここで問題になるのが、僅かなイメージサークルの違いによる画面のケラレの問題でしょう。実際、今回紹介した改造を例に取るとイメージサークルは16ミリが2/3インチより僅かに大きいだけなのにショート系ズームレンズでは最短側でケラレが出ます。業務用レンズも、かなりギリギリの所で造ってんだなー、と言う感じを受けました。ビデオ用のズームレンズを16ミリカメラで使用する時は、テスト撮影等をしてケラレの状況を十分に把握しておく必要があります。ちなみに1/2インチ用は16ミリカメラには全然無理です(8ミリカメラへの使用なら全く問題ありません) |
その1 マウントアダプタを作って接続する
マウントアダプタを作って異機種のカメラ、レンズを接続する方法は双方に何の改造も加える必要がないため比較的安全な方法であると言えます。メーカー製の変換アダプターがまさにこの形式です。メーカーから発売されている場合は、それを購入すれば良いのですが、それが無い場合は十数万かけて町の機械屋さんなどで作ってもらうことになります。そこで、自作にトライしてみました。今回は比較的入手が容易、性能もそこそこ、メーカー製のアダプタが無い、実際の使用において重宝する(有用性が有る)、マニア向け、以上の点を考慮した結果、ソニーマウント(ベーターカム一体型などの業務用や放送用ビデオカメラのマウント)をCマウント(ZC1000や16ミリカメラのマウント)に変換するアダプターを作ってみます。定価40万円前後のいわゆる業務用ビデオのズームレンズが、中古で数千円と言う安価でインターネットオークションに出回っているのを見かけます。キヤノンのJ15X9.5Bと言う2/3インチ撮像素子用15倍ズームがインターネットオークションで3000円!で入手出来ましたので、これをZC1000や16ミリカメラのマウントに採用されているCマウントに変換するアダプタを製作します。今回入手したキヤノンのJ15X9.5Bのマウントはベーターカム一体型等でおなじみのソニーマウントです。ソニーマウントとCマウントのフランジバックの差は実測で約30ミリでした。マウントアダプタを作成するには、レンズに合うマウント(今回はソニー製ビデオカメラの本体側に付いている物)と取付けようとしているカメラに合うレンズ用マウント(今回はCマウント)を入手する必要が有ります。レンズ側マウントのCマウントは比較的簡単安価に入手可能(安価な監視カメラ用レンズをバラして使う等)です。今回の製作で一番入手が難しいのがソニーマウントでしょう。中古(ジャンク)のかなり古い(撮像管式)カメラ本体がインターネットオークションに2万円前後で出ることが有りますが、これなどは部品取りとして格好の物だと思います。マウントアダプタの製作は必要になる2種類のマウントの入手如何にかかっています。余談ですがカメラマウントやレンズマウントは必要の有無にかかわらず日頃から機会が有るごとに入手を心がけておきます。(壊れたカメラやレンズは二束三文で買えるものです)。今回の製作に使用するマウント自体の厚みはソニーマウントが5ミリ、Cマウントが6.5ミリでした。フランジバックの差は実測で約30ミリでしたので、各マウントの厚みを差し引いた約18.5ミリをアルミ部材などでつなぎます。アルミ部材などでつなぐ、と言っても素人には、このアルミ部材を精度良く作るのは難しいものです。今回はこれを部材の購入も含めて都内の大型素材販売店、東急ハンズの加工コーナーにお願いしました。部材代込みで6000円弱にて十分実用的な精度で出来上がって来ました。ネジ穴は自分で開けましたが、ここまでお願いしても8000円位でお釣りがくると思います。根気の有る方はこのくらいの物なら一週間も有ればヤスリと金ノコ、ハンドドリルで作れるかもしれません。今回使用したマウント部品は以前にタダ同然で入手したものですが、これをメーカーより補習部品として購入し30000円かかったと考えても約4万円弱でオリジナルマウントアダプタが手に入る訳です。約4万円弱で定価40万円前後のズームレンズがZC1000等のCマウントカメラにて使用可能になる、これが安いか高いかは意見の分かれる所だと思います。私見ですが業務用のズームレンズの作りや操作性の良さ(ZC1000の純正10倍ズームの比では有りません)、10数倍ズームレンズの創りだす映像的迫力や膨大な業務用、放送用ソニーマウントレンズが使用可能になる等のメリットを思うと、4万円は高くないと思えます。ちなみに、このレンズは、レンズ内部に接着剤で貼付けられているゴースト防止用のマスクを取り外せば16ミリカメラにおいても全域で、なんとかケラレなく使用することが出来ます。しかし、このマスクを外すのはレンズの前玉部分を外さなければならず(割と簡単に外せるのですが)、自信の無い方は8ミリカメラ専用と考えた方が良いと思います(8ミリカメラならこのマスクが有ってもケラレる事はありません) |
下の図は、東急ハンズ加工コーナーに部材の切り出しをお願いしたとき添付した図面です。購入した部材は200mmX100mm 厚さ5mmと100mmX100mm 厚さ3mmのアルミ板 各1枚 費用は加工費込みで6000円弱でした。 |
下の写真の下段のリング4個が、上図を元に東急ハンズ加工コーナーで作成してもらった物です。写真の物はネジ止め用のビス穴加工まで終了した状態の物です。上段は左側からソニーマウント、ソニーマウント用止めネジ、Cマウント用止めネジ、隙間微調整用真鍮板(厚さ0.5mm)、Cマウント(散り付け用ビス穴加工済み)です。アルミ部材は素材アルミ板の関係もあり、厚さは1mm単位で作成し、実際に必要な厚さより1mm以内で短く作っておきます。こうした上で、隙間微調整用の薄い真鍮板を数枚重ねて必要な厚さに調整します。今回は0.5mmの物を使用しましたが、もう少し薄いものを数枚使った方が加工が楽だと思います。真鍮板は厚さ0.1mm刻みで販売されているようです、また、薄いものはハサミで簡単に切れます。 |
上の部品を組み立てると下の写真の様になります。実際にはこれに黒のつや消しペイントを塗って仕上げます。アルミのような光った部材で作った時は、必ず内面につや消しペイントを塗り、内面反射の防止を図ります。もちろんペイントを塗る前に実際にカメラに取付けてみて無限遠にピントがくるか等チェックしておきます。ピント位置の調整は、真鍮板などの増減で行ないます。 |
下の写真は、ペイントを塗る前のアダプタを、実際にカメラ(ZC1000)に装着したところ。 |
業務用、放送用ズームレンズの場合は、若干のピント位置調整はレンズのバックフォーカス調整リングでも可変出来ますので(0.5mm位は調整出来る)、アダプタ組立時には、それ程シビアに合せ込む必要は有りません。下の写真の黄色い矢印で示したツマミがバックフォーカス調整リングのツマミです(左がキヤノン、右がフジノン)ツマミ部分がネジになっていますので緩めてからリングを回して調整します(もちろんカメラに装着した状態で) |
全てがオーケーでしたら、最後に黒のつや消しペイントを塗って仕上げます。この黒のつや消しペイントが実はなかなか良いものが有りません。カメラ補修用の専用ペイントがカメラ雑誌の誌上で通販されていますが、極少量で数千円とバカ高です。オキツモと言う会社の耐熱塗料はなかなか良いつや消し具合で値段も600円以下と手ごろです(下の写真)。 |
------- 2007年12月3日 追記 ------- HPを読まれたKitagawa様よりオキツモの塗料を使用する上での注意点を御指摘いただきました。以下はKitagawa様がメーカーに問い合わせて得られた情報です。 『弊社商品は、耐熱塗料でこれらは、主にシリコーン樹脂を使用しております。このシリコーン樹脂は、熱硬化型で完全硬化には加熱(180℃/20分程度)が必要になります。常温での乾燥では、見かけ上の指触乾燥はしていますが、アルコール、ベンジンなどの溶剤で拭きますと、塗膜が軟化したり溶けて素地が露出したりします。』 との事です。レンズマウントを熱処理は出来ませんので、もしこの塗料を光学機器等の反射防止用に使う場合は、塗布部分のその後のメンテナンスには溶剤等で拭く事の無いよう注意する必要がありそうです。 |
その2 レンズのマウント部分を変えてしまう
業務用や放送用のズームレンズは各メーカー共、対応する撮像素子の大きさ別に1/2インチ用、2/3インチ用が発売されています。型番の付け方はどのメーカーも大体同じでズーム倍率かける最短側の焦点距離が含まれているのが普通です(例、キヤノンJ15X9.5cはズーム比15倍で最短焦点9.5ミリのレンズ、キヤノンでは頭のJは2/3インチ用Jを含まないものは1/2インチ用、フジノンは頭にAが付くのが2/3インチ用、Sが1/2インチ用、ニコン製は全て2/3インチ用、アンジェニューTVズームは頭に識別文字は付かないため型番だけでは1/2か2/3かの判断は出来ない、各社の放送用レンズやニコン製、アンジェニュー製はインターネットオークションではまず出てこない様です)レンズメーカーは、各カメラ用に同じ本体をマウント部分のみ変えてラインナップしているのが一般的な様でレンズマウントの変更は不可能ではなさそうです。特に映画やビデオ用のマウント部分は、写真のカメラのマウント部分のように、絞りの連動レバーだの何だのと複雑な機構部分はなく、ただレンズとカメラを連結するだけの物なので改造は比較的簡単そうです。定価が40数万円の業務用レンズ(ちなみに放送用は同じスペックの物で百数十万円!)もインターネットオークションでは、使用方法が無いためか二束三文の数千円!!で取引されています。この値段なら、たとえ失敗して壊してしまっても惜しくない!?、のでレンズマウントを直接、エイッと改造してしまいます。この方法は、カメラ本体側マウントが必要ないだけマウントアダプタの製作よりも安価に出来ます。製作の難易度はレンズにもよりますが、マウントアダプタの製作よりやや難しいかもしれません。製作上の注意としては加工部分の直近にレンズ(後玉)が有るので、これにキズを付けないようにする事。加工時に出る切り粉などがレンズの機構部に入らないように注意することです。今回紹介する例はフジノン製の業務用ショートズーム A3.5X6.5 をCマウントに改造した物です。ズーム比は3.5倍と低いのですが、6.5ミリからのワイドアングルはかなり迫力があります。このレンズも造りは非常に良く、キヤノン製の15倍ズームと比べても映像の切れがいちだんと良いです。16ミリカメラで使用したとき、ワイド側の7ミリ以下の部分でケラレが出るため、余裕をみて8ミリよりショート側に入らないようなストッパーを設けました(8ミリカメラでの使用も考えON,OFF出来るようにしました)絞りやズームリングを制御する為のサーボモーターと電子回路が内蔵されたハンドグリップ部分はかなりの重量が有るのと、実際にCマウントのカメラに取付けた時、カメラの機種間でレンズの止まる位置が一定していない(これがCマウントの欠点の一つです)、よってカメラによっては、ハンドグリップ部分がとんでもない位置に来てしまう、内蔵のサーボ回路は動作させる事が出来ない(パワーズームだけなら電源を供給すれば動作可能ですが)以上の理由から取り外してしまいました。ハンドグリップ部分は、4本のネジを緩めれば簡単に外せます。ただし、この部分を外してしまうと絞りリングの動作がスカスカになってしまう為、何らかの対策を講じなければなりません。今回は、金具をスプリングで絞りリングに押さえつけて動作にネバリを出すようにしました。 |
下の写真はマウント改造が完了しCマウントになったフジノンA3.5X6.5ズームレンズです。Cマウント部品をレンズボディーにネジ止めして、尚且つ補強のためにエポキシ系の接着剤で接着しました。その上から黒のつや消しの耐熱塗料をマウント内部と外側に塗ってあります。つや消し塗料を塗るときは、レンズの後玉に付かないように十分に気をつけます。 |
下の写真、赤い矢印の部品は、16ミリカメラで使用時にズームリングが焦点距離8ミリより短い側に入らないようにするストッパー。ミドリの矢印で示した部分が、ズームリングに付いているデコボコ(パワーズームの歯車にかみ合う部分)を一部削り取り、ズームリングの回る範囲を制限する為の部分。黄色の矢印が、絞りリングの回転にネバリを与える為に追加した部品。スプリングで部品が絞りリングに押さえつけられている。 |
ズームリングのストッパーは、下の写真のように5ミリ角のアルミ棒をヤスリで加工し、レンズに始めから付いていたネジ穴を使用して固定した。写真の状態はストッパーオフの状態、ネジを外して左右を逆に取付けるとストッパーオンの状態になり、ズームリングのギザギザを削り落とした部分のみの回転範囲となる。 |
もう一例、キヤノンJ15X9.5Cと言うマウント変換アダプタを制作したレンズと同じ製品でマウント違いの物(何マウントかは不明)がインターネットオークションで1000円!!で入手出来ましたので、これをCマウントに改造する例をご紹介します。 |
まず、マウント部分の止めネジ8本を緩めてマウントを外します。このネジは、小さい割にかなり強く締めつけられており、その上ネジロック(接着剤のようなもの)で固定されています。ドライバーがネジの頭をナメないように注意して下さい。ネジの頭にドライバーを当てたら、プラスチックハンマーなどで軽く数回叩いてから回すと緩みやすくなります。 |
下の写真の様にマウント部分を外します。こうして外した部品やネジは必ず保管しておきます。その時には使用しなくても、他の部品に転用できたり何かと便利に使えるからです。 |
マウント改造のポイントは、移植するマウントをどの部品に取付けるかを見極めることです。移植しようとしているマウントの形状やレンズの重さ等を考慮、研究して決定します。今回は、上の写真の様に既存のマウントを外した後に取付けることにします。このレンズは幸いにも、新規マウントを取付けようとしている部品も、6本のネジを緩めて外せました。下の写真が、その部品を外した状態です。 |
この部品にCマウントを取付けます。このように、部品を外してから作業が出来れば、レンズの後玉を傷つける事もなく、穴開け加工などもやり易くなります。 |
下の写真の様に、矢印で示した部分(レンズの焦点距離とCマウントカメラのフランジバックの差)を、マウントアダプタを作成した時と同じような要領で、アルミ部材などで繋ぎます。 |
今回の改造に使うCマウント部分は、下の写真の様な監視ビデオカメラ用レンズ(1個500円のジャンク品)をバラしたもの(フジノンレンズの改造にもこれと同じものを使用)を使います。 |
レンズのボディーはプラスチック製の為、ニッパー等で簡単に分解出来ます。 |
下の写真が、ホジクリ出したCマウント部品です。このCマウント部品は、真鍮にクロムメッキ製の大変丈夫な物の為、うまく使えばかなり重いレンズにも対応可能です。リブ部分が小さいので、若干、取付けに工夫が必要です。 |
ハンドグリップの内部回路や信号の引き出しに付いて
業務用、放送用ハンディーカメラ用のズームレンズには必ずズームと絞り用のサーボモーターと制御回路が内蔵されたハンドグリップが取付けられています。このハンドグリップは、大体どこのメーカーのレンズも4本のネジでレンズ本体に取付けられています。4本のネジを外せば簡単にレンズ本体から外せます。ハンドグリップはCマウントに改造した場合は、レンズの止まる位置が一定しない、カメラ側に対応する制御回路が用意されていない、Cマウントの機械的強度から考えてもレンズにハンドグリップを付けたままにしておくのは宜しくない、と言う理由から外してしまうのが最良の方法です。それでも、パワーズームだけでも何とか使いたい、と思う方もいらっしゃるでしょう。実際、パワーズームだけなら簡単に動作させる事が出来そうですので、改造の方法を説明いたします。ハンドグリップ内部には、内部の機構を制御する基盤が1枚入っています。この、制御回路に電源を供給すれば、パワーズーム回路が動作します。ハンドグリップへの電源はカメラ側より供給されます。ハンドグリップにはカメラから電源の供給を受け、絞り制御やレコーダースタート、リターン等の信号のやり取りをするコネクタ付きの電線が1本生えています(ここに付いているコネクタはカメラ本体の機種によりそれぞれ違う)。このコネクタのどれかのピン2本が電源供給ピンです。供給電圧は業務用、放送用の場合、まず間違いなく、カメラの電源と同じ12ボルトのはずです。やみくもに適当なピンに電圧を加えると、一瞬にして電子回路を壊してしまいますので、ここは慎重に本体を分解し、内部の基盤を観察して、電源ピンを特定します。分解すると言ってもフタを開けるだけですので割合簡単に出来ます。電源供給の電線はカメラへ接続するコネクタから来ている電線で一般的に言ってプラスは赤や黄、水色等の電線が多いものです。マイナスは黒や白、青等が多いものです。その他の一般的特徴として、電源線は他の電線より太い線を使用する、電源線はプラスとマイナスが比較的近づいて接続されている、接続点の近くには必ず大容量のコンデンサーが取付けられている、等の点を考慮して電源線を特定します。電源線が特定できたら(またはこれかな?と思ったら)、カメラに繋ぐコネクタを切り離し(どうせ合うコネクタが無いのですから)、電線を剥いて先ほど特定した色の電線に電源を繋ぎます。電源は乾電池の直列6本(9ボルト)位がテストには安全です(この電圧でもサーボモーターは十分動作します)。電源を繋ぐ前にズームレバーをどちらかに倒しておいて、電源供給そく動作の状態にしておきます。こうして電源を供給してズームギアが動作すれば成功、動作しなければ失敗です。失敗しても短時間(数秒間)なら電子回路はいきているかもしれません。もう一度慎重に調べて再トライします。成功したらハンドグリップのフタを閉めて、電源線に12ボルト位の電池を繋ぐように改造します。 |
下の写真は、2本並んでいるレンズの左がキヤノンJ15X9.5C、右がキヤノンJ15X9.5B。業務用、放送用ハンディーカメラのズームレンズは、4本のネジを緩めて簡単にハンドグリップを取り外す事が出来る。 |
ハンドグリップの外殻を外すと中に基盤が1枚入っている。 |
下の写真の、黄色丸で囲んだ部分に接続されている電線が、電源供給線。左がキヤノンJ15X9.5C、右がキヤノンJ15X9.5B。左のキヤノンJ15X9.5Cの基盤は電子回路が壊れていた。ジャンク扱いで1000円のレンズなので致し方ない。ハンドグリップが壊れていても、レンズ本体が使えればレンズマウントの改造には、なんら問題ない。むしろ、ハンドグリップに内蔵された機能を使おう等というスケベ心が出なくて良い!? |
回路が生きていたキヤノンJ15X9.5Bの基盤部分の拡大。黄色の矢印で示した2本の電線が電源供給線。左側の赤い線がプラス側(12ボルト)、右側の水色の線がマイナス側。ここに12ボルトを供給すると、パワーズームが動作するようになる。 |
下の写真は、ハンドグリップから生えている、カメラ本体との接続ケーブルに付いているコネクタ。レンズ本体が同じラインナップの製品でも、接続するカメラが違うと、コネクタの形状やピン数、信号の種類に違いが有る(2つ上の写真を見ても解るように基盤自体もに違いが有る)。左がキヤノンJ15X9.5C、右がキヤノンJ15X9.5B。 |
キヤノンJ15X9.5Bはソニーの業務用3管式カメラDXC-M3Aのズームレンズです。カメラへ繋ぐ6ピンコネクタの、各ピンの信号の種類と接続を調べてみました。下のアクロバット書類をご覧下さい。 |
ハンドグリップの下側の面にはリモコン接続用のコネクタがついています。下の写真、黄色の矢印で示した物がそれです。この部分はキヤノン、フジノンレンズはコネクタ形状やピンコネクション、信号の種類がやや統一されており、互換性があります。また、このコネクタを見ると、そのレンズが業務用か放送用かも解ります。下の写真の様な8ピンコネクタが付いたものは業務用レンズ、14ピンコネクタが付いたものが放送用レンズです。放送用には複数のコネクタが付いている物も有ります。放送用14ピン、業務用8ピン共に、このコネクタには、ズームの遠隔操作用のリモコンを取付けることが可能です。 |
下の写真の右側が、このコネクタを取り外した物です。左側は、キヤノンJ15X9.5Cのハンドグリップから生えていた、カメラとの接続ケーブルに付いていたコネクタ。この2つのコネクタはオスとメスでぴったり合う。リモコンを自作する時に利用できそうだ。 |
解像度に付いて
ビデオ用のレンズをフィルム用のカメラに使用する場合の問題点(心配点?)としてレンズの設計解像度の問題があると思います。レンズの設計上の解像度はそのレンズが使用される状況に最適化されていると考えるのが一般的でしょう。と言うことは、業務用や放送用ビデオレンズの解像度は、組み合わせるカメラの解像度に合せて、カメラの解像度の数倍くらいに設定されていると考えて良いと思います。多分?(これはあくまで憶測です)。もしそうなら、カメラの解像度を知ればレンズの解像度も予測できそうな気がします。実際に今回改造した業務用ビデオズームを8ミリ(ZC1000)、16ミリ(ボレックスEL)にて使用してみると、16ミリでは完全に使えないと言う訳では無いのですが、キヤノンの15倍は、かなり甘い(ピントが、特に周辺が良くない)、寄ったときはそれでも何とか許せるが、引いた画像の解像度はひどい。フジノンの方はかなり切れが良く、16ミリでも十分に使えると言う感じでした。6.5ミリから7ミリ位にケラレが出るのが惜しいと言う感じです。8ミリでは、各レンズともイメージサークルの真ん中の、最も性能の良い部分のみ使用するため、かなり使える、と言う感じです。特に高倍率ズームは8ミリカメラのみでの使用に限ったほうが良いのかなー、と言うのが今回のズームレンズを改造してみての感想です。 |
写真用レンズの改造例
写真用レンズのマウント改造も基本的にはビデオレンズの改造方法と同じです。ただし、写真のレンズはマウント部分に絞り連動機構やミラー動作レバーが付いているのが一般的です。これらの連動機構を生かした状態での改造は、基本的に無理であると言えます。よって、ビデオレンズの改造の時と同じようにレンズとカメラを単純につなぐことが可能になるだけです。しかし、これであっても、カメラ本体に絞り込み測光機能が付いている場合などは十分に実用になります。 |
下の写真はオリンパスオートエクステンションチューブをニコンマウントに改造したものです。写真のニコンのカメラFMには絞り込み測光機能がありますので、機械的に結合さえ出来れば、なんら不自由なく使用出来ます。オリンパスのマクロレンズは、大変に解像力が高く仕事でも重宝しています。マクロ135mm、マクロ80mm 、マクロ38mmをこれで使っています。オリンパスのレンズを使うならオリンパスのボディーOM4等を使えば良さそうですが、オリンパスのボディーは、フィルム室開閉のロックが無いのと、巻き上げレバーの感触がとても悪いので、仕事には使いたくないカメラの筆頭です。 |
下の写真は1956年発売のフォクトレンデル製カラースコパー(ビテッサT用)をニコンマウントに改造したものです。右側の写真を見ると解るように、ビテッサTのマウントをニコンマウントの中に残した状態で改造しました。このレンズの凄いところは、1950年代に造られた物なのに、マルチコーティングがなされていると言う事です。焦点距離は50mm、F2.8、年代物の割にはかなりシャープで、発色などは現在の最新型レンズと比べても少しも見劣り致しません、と言うより今のレンズには無い発色です(これが元祖ドイツ製カラー用レンズの発色なのでしょうか)。大きさはGNニッコール40mm位か、それより若干薄い感じです。造りも大変丁寧で、被写界深度目盛りなどは、カニの爪様の指針が動く凝ったものです。アルミ等は使用しておらず、全真鍮製です、だから大きさの割にすごく重いです。と、ここまで良いことずくめですが、欠点はすごく使いづらい事です。ピントリングも絞りリングも、すごく回しづらいのです。ピントリング、絞りリングともに補助ツマミを付けたのですが、それでも回しづらい。だから、このレンズは仕事の合間の自慢専用に使っています。 |