ホエーブス725改

「ガソリンで火遊びボウボウ工房」の第3弾。かつて登山用ストーブの代名詞と言われたほど有名なホエーブスのストーブ。共同装備では625、個人装備では725との位置付けでしたが、これら双方のバーナーヘッドはほぼ同じサイズなのです。この特徴を利用してホエーブス725をサイレントバーナーとローラーバーナーどちらでも使えるようコンパーチブル化してしまおうと言う訳だ 。今となっては絶版のストーブではあるが、特にホエーブスは山岳会などでの共同装備として販売台数がそれなりに多かったと言う事情もあってか、使い込まれた中古がお手頃な価格でネットオークションにお目見えするのを頻繁に見かける。山岳会の倉庫等で625と725の両方が眠っている場合もありましょう。そんな眠れるホエーブスに改良を加え楽しく実用的に使いましょうと言う企画である。

ネットオークションにて落札したかなり使い込まれたホエーブス725。左の写真は落札後に清掃とメンテナンスを終えた状態のものだ。

まずは完成写真をご披露いたそう!。加工する部分を最小限にとどめているので比較的簡単に改造が可能だ。10秒ほどで簡単に元のローラーバーナーに戻す事が出来るのも特徴だ。

今回の改造ではホエーブス625に使われているサイレントバーナーの部品が必要になる。ホエーブス625も保有していればその部品を使えば問題ない。ちなみに部品の加工は軽微なものであり、加工後の部品は元の625でも何ら問題なく使う事が出来る。今回は左のような625の新品バーナーヘッドのみをヤフオクで落札出来たのでこの部品を使う事にした。

記事を書くにあたり部品の呼び方はかつて国内でのホエーブスの販売元であったエバニューから出ていた修理マニュアルでの呼称に準拠する。

まずは625のサイレントバーナーの部品A-31。左の写真は加工前の部品A-31だ。

細い棒ヤスリを使って左のように外周に小さな切り欠きのような凹みを作る。

切り欠きのような凹みは外周の180度対称になるような位置2ヶ所に作る。これで部品A-31の加工は完了。

次は625の部品A-30に加工を加える。写真は加工前の状態。写真のように外周の1ヶ所に切り欠きのような凹みが付いているはずである。

この切り欠きのような凹みをもう1ヶ所180度対称な位置に細い棒ヤスリを使って作り付ける。これで部品A-30の加工は完了。

次は725のバーナー部分の部品B-17に加工を加える。

B-17の加工を加える部分のアップ。左の写真は加工前の状態。

この部分を左の写真のような形に削って成形する。この部分は対称位置にもう1ヶ所あるので両方ともに同じように仕上げる。最初から大きく削りすぎないように注意する。

小型のルーター等を使うと簡単に加工出来る。

ルーターが無い時にはヤスリで気長に削る。B-17の加工はここを削れば完了。以上でサイレントバーナーを装着する為の加工は全て完了だ。

ここまで出来たらサイレントバーナーを装着してみる。まずはA-31。

加工がうまく行っていれば写真のように装着出来るはずだ。うまく装着出来ない時にはA-31の凹みをもう少し大きくするか、B-17を少し削ってみる。どちらにせよ慎重に少しずつ行うこと。

加工がうまく行っていれば装着した後、ローラーバーナーの部品B-21を装着する時と同じように回転させ、部品が不用意に外れない状態にする事が出来る。

A-31がうまく装着出来たらA-30を装着する。A-30の切り欠きとB-17の凸部を合わせて隙間が出ないように置くだけである。

写真のような状態で装着出来れば成功である。うまく入らないようならA-30の切り欠きを少しずつ大きくしてみるか、B-17の凸部を更に少し削ってみる。尚、A-30はA-31のように装着後に回転させて固定する事は出来ない。

特にA-30の装着はB-17との間に隙間が出来てはいけない。写真の状態はかなり極端な例だが、ここに若干でも隙間があると燃焼時にローラーバーナーのような轟音が発生し炎にアオリが出る等の不安定な状態になる。

A-30、A-31を外してB-21を装着すれば簡単に元のローラーバーナーに戻す事が出来る。

サイレントバーナーはローラーバーナーよりも高さがあるためオリジナルの五徳のままでは写真のようにバーナーの方が五徳よりも若干高くなってしまい具合が悪い。

サイレントバーナーのトップと鍋底のクリアランスは625の場合1mm前後である。今回はこの625を参考にし1mm前後のクリアランスが取れるように五徳の部品B-1を整形する。左の写真で右側がオリジナルのB-1の形、左側が今回整形したB-1だ。この加工はバイスと大型プライヤー等を使い腕力勝負の力技で行う。

3本とも同じ高さになるように整形する。鍋を置いた時にバーナートップと鍋底が左の写真位の隙間が空くように整形すれば良い。ちなみに725のもともとの五徳の長さは90mm。今回必要な五徳の長さは96mm。

実は今回の改造で一番難易度が高いのがこの五徳の加工だ。ホエーブス625の五徳が手に入れば簡単に行える。左の写真で左側が今回整形した725の五徳、右側は625の五徳。625の五徳は部品の太さは725の物と同じで長さが長いだけだ。よって625の五徳を金ノコで必要な長さに切ってしまえば良い。

以上で今回の改造は全て完了。

サイレントバーナーの部品A-30はロックが掛からずただ置いてあるだけだが使用するに何ら問題はない。バーナーの炎で部品A-30が動いたりする事は絶対にない。ましてや燃焼中にバーナーを強く揺すったり横にしたりする事などあるはずが無い。よって部品A-30は置いておくだけでも全く問題はないのである。

これは余談ですが725のローラーバーナーの部品B-21は左の写真のように625のバーナーに何の改造も無く取り付ける事が出来ます。こうすると625がローラーバーナーのストーブに変身します。625で轟音を楽しみたい時には宜しいかも。625と725の両方を所有している方は是非お試しあれ。

早速、燃焼テストを兼ねて1リットルの水が何分で沸騰するかを検証してみた。条件を揃えてローラーバーナーとサイレントバーナーの双方で行ってみた。

燃料用のメチルアルコールをプリヒート皿に左の写真のように7分目ほど入れます。この量で約2分間のプリヒートが出来ます。プリヒート完了後に直ちにバーナーに着火してニードルは常に火力最大位置で水を入れたコッヘルの加熱を開始します。

容量1400ccの深型チタンコッヘルに水温11度の水を1リットル。気温は14度、無風。3000m級の夏山のキャンプサイトの朝って感じの条件です。

サイレントバーナーの場合9分ジャストで沸騰。

ローラーバーナーの場合8分15秒で沸騰。

意外にもローラーバーナーの方が若干効率は良いのですね。

ホエーブスには専用のコンテナ缶が付属していますね。とてもレトロで時代遅れなブリキ缶ですので調理用コッヘルとして使うなんて全く持って無理です。ホエーブスを実用的に使いたいなら、このコンテナ缶も何とかしたいですね。実はホエーブス725は容量1400ccの深型コッヘルにあつらえた如く見事にピッタリ納まるのですよ!!

容量1400ccの深型コッヘルは各社から発売されていますがどれも寸法は概ね同じような物です。

左の写真はスノーピークのチタントレック1400にホエーブス725サイレントバーナーの一式を納めた状態です。

この写真はエバニューの深型チタンクッカーに一式を納めた状態。このようにクッカーをコンテナ代わりにして持ち運べばすっきりスマートでGoodですね!

前にも書きましたがホエーブス725は個人装備、625が共同装備と一般的は言われていますがバーナーの大きさを比べるとほとんど同じなんですね。実際に火力もそれほど差がありません。私が登山で常用しているスベア123Rと比べると火力は倍ほどもホエーブス725の方が強力です。火力が強い分、燃料の使用量は多いですが、五徳が大きく丈夫であること、テント内でも安全にプリヒートが出来る構造であること等を考慮すると、2〜3人でのテント泊で行く登山やツーリング等の共同装備にはイチ押しのストーブと言えます。常用ではお勧め出来ませんが緊急時にはレギュラーガソリンの使用も可能です。もっと見直されても良いストーブだと思うのです。

最後に今回改造したストーブの燃焼状況の動画を下記に掲載します。動画枠内の下部にあるコントロールパネルの再生ボタン(三角マーク)をクリックすると再生が始まります。尚、ムービーを再生するにはflashプラグインのバージョン9以上が必要です。

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