超高輝度LED使用コールドライト試作にあたっての概略

最近、価格が下がって入手しやすくなった超高輝度LEDを使用してマルチグレード紙対応のコールドライトを試作してみることにした。左の写真は今回試作品を取り付けて使用する引伸し機ミカデュープ。製品にはフジのカラーヘッドC450が付いている。このC450のディフューザーボックスをコールドライトに置き換えることにする。右が試作したコールドライトとコントローラー。今回はLEDのコールドライトへの応用の可能性を探り、その特性を調べるための試作と言うことで、各部の作りは恒久的な物を目指さず、簡易的な仕上げとした。


マイダークルームの引伸し機はミカ電子と言う会社が作っているミカデュープシステム。本来は現像所でフィルムのデュープ作成用に使用する為に作られた機械だ。ヘッド部にはフジのカラーヘッドC450が使われている。写真はそのディフューザーボックスを取り出したところ。ヘッドの下、台版の上に置いてあるのが取り出したディフューザーボックス。このディフューザーボックスはヘッド内に上から落とし込んで取り付ける、と言うより置いておくタイプなので、このディフューザーボックスと同じ寸法にコールドライトヘッドを作れば難なく装着出来るはずだ。他の機種の引伸し機でも使用しているディフューザーボックスと同じ寸法に作ればたいていはうまく装着出来ると思う。集散光式などディフューザーボックスを使用しない機種の場合は光源部とそこより下のネガキャリア部との連結機構をうまく工夫して作る必要がある。そこさえうまく作れればどんな引伸し機にも装着できるはずだ。コンデンサーレンズと同じ大きさに作って置き換えると言う手もある。見てくれを云々しないのならば、今回作るLEDコールドライトはかなり軽いのでパーマセルテープ等で貼り付けて連結させるという荒技も可だ。もちろんフジのC450を使用している人はそのままいける。フジのA450でもこのままの寸法で比較的簡単に取付け可能かも、、、。

左の写真の左側にあるのがフジのカラーヘッドC450に使われているディフューザーボックス。右側にあるのが今回作ったLEDコールドライト。


ここから先は下に掲載のPDF書類、コールドライト部の大まかな寸法電気的構成図を見ながら読むと、より理解しやすいと思う


コールドライト部の大まかな寸法(PDFファイル12Kバイト)→ランプ部の図面

電気的構成図(PDFファイル20Kバイト)→コンとラーラー部の回路図

 


今回の試作に必要な工具類

今回の工作に必要な工具一覧。文房具の部類に属する様なもの(ハサミやカッターナイフ等)を除くとだいたい左の写真に有るような物を用意すれば大丈夫だと思う。写真上からプラスドライバー、小型ハンドドリル、小型ニッパー、ラジオペンチ、直径5ミリくらいの金属用丸ヤスリ、金属用平ヤスリ、金属用精密ノコギリ、細めの電子部品用糸ハンダ、15ワットくらいの先の細い電子工作用ハンダゴテ、以上。今回の工作はどちらかと言うと、わりと小型で精密な加工を必要とするため、工具類は日曜大工用の大きな物で無いほうが使いやすい。ホームセンターでホビー用などと名打って販売されているものが良いかも。この中で値段が張るのは小型ハンドドリルくらいか?これは充電式のそれも電子変速式が使いやすい。交流式でも回転数が変速出来る物で小型のものなら良いと思う。

あると便利な工具。左からハンドニブラー、絶縁被覆付き端子用の圧着ペンチ、電線の皮むきや圧着ペンチやネジ切り器が一体となった複合型ペンチ。ハンドニブラーは金属版を少しづつ食いちぎるような形で切り取って穴開けや切断加工する工具でかなり便利だ。複雑な穴開け加工が簡単に出来る(宝山工具製、型番K-88)。ハンドニブラーでの作業はヤスリで代用することも可能だ。

絶縁被覆付き端子用の圧着ペンチも見慣れない工具かもしれないが、電気工作などには有ると超便利な工具だ。電線に各種Y端子や丸端子の取付けから電線同士の接続などの作業が手早くしかも確実に出来る。この圧着ペンチに対応する絶縁被覆付き端子は実に沢山のタイプが用意されている(左の写真でペンチの下に写っている物はそのほんの一部)。誰が作業しても接続ミスや絶縁不良が起らないよう、一定の圧着圧力で圧着できるような工夫がなされている。プロも使っているスグレもの工具だ。端子メーカーのニチフ端子など各社から発売されている。値段は、、、高い。この圧着ペンチでの作業はハンダゴテと絶縁用ビニルテープで代用することも可能だ。


使用する部品や部材など

青色発光と緑色発光の超高輝度LED。東京は秋葉原の秋月電子通商で購入した。余談であるが、この秋月電子通商は秋葉原では知る人ぞ知る自作マニアの大穴場だ。ここで販売している部品類には、その殆どにメーカー発表のスペック表のコピーが付いている。これは自作派には大変ありがたい事だ。またここにはかなりレアな部品が出る事がある。値段も秋葉原で一番安いと言っても過言ではない。最近はネット通販もやっているようで地方の人にも利用しやすい店だ。余談の余談であるが、僕は20年以上前からここを利用している。当時は今の場所ではなく、もう少し総武線寄りの路地に有ったと記憶している。所謂、キット屋さんで、当時の秋月のキットは必要な部品以外に何か良く分かんない必要なさそうな部品が入っていて、作り終えるとかなりの部品が余る!?と言うオチャメな物であった。当時は店員が二人くらいしかいなくて、その内の一人のお兄さんは、購入した部品を袋に入れて渡してくれるとき、合計金額を言うのだが、その言い方が「1500円になりました」と言うのである。この「なりました」が、何だか神社でおみくじを引いて小吉か中吉あたりが出たときの微笑ましさが有り印象深かった。そのお兄さんは(もはやおじさんか?)最近見かけないようだがどうしたのだろうか?もしかしたら偉くなって店の奥で葉巻くわえて電卓たたいてたりして!?

失礼、失礼。ついつい余談が長くなりすぎてしまいました。今回購入したLEDは青色発光の物が発光域410nmから530nmでピークが470nm、最大輝度2700mcd。緑色発光の物が発光域450nmから600nmでピークが525nm、最大輝度9500mcdの物だ。値段は青が10本で450円、緑が10本で500円。これを青81本、緑64本の合計145本配列して使うことにする。これだけ購入してもC450で使用している24V250Wのハロゲンランプ1本分チョットだからそんなに高くは無いと言える。マルチグレード紙の代表として、オリエンタルのニューシーガルVC-FB2のデータシートに出ている分光感度分布と比較してみると、緑色のLEDの発光域はニューシーガルVC-FB2ローコントラスト域と良く一致している。青色のLEDの発光域はニューシーガルVC-FB2のハイコントラスト域よりやや長波長側(ローコントラスト側)にずれているが何とか使えそうな気がする。LEDは素子自体の発熱が殆ど無い(長時間点灯しても人肌程度の発熱)、比較的発光波長域が狭い(不要な波長の光が出ない。この点メーカー製のコールドライトの殆どが使用している冷陰極管などはかなりの量の近紫外線を発生するようだ。また電極部分からは、かなりの発熱量がある)以上の点を考えると、コールドライトの光源にはLEDが最適なように思える。ちなみに秋月では冷陰極管も販売していた。直径1.3ミリで長さ90ミリの超小型のもので1本200円、100本まとめて買うと9800円だそうな。これなどを70本くらいビッシリと配列したブローニー用コールドライトなんてのも良いかも知れない。誰か作れば、、、。

また話が横道にそれてしまいました。失礼。LEDはガラスエポキシの蛇の目基板にハンダ付けして配列する。今回はバーゲン品のスルーホール基板を使用した。経年変化の事を考えるとガラスエポキシ製が一番だ。必ずしもスルーホールで有る必要は無い。大きさは目的の原版サイズを十分にカバーするものを選ぶ。今回は45用の伸し機なので45のフィルムを縦位置でも横位置でも十分にカバーする大きさの物を選んだ。左の写真の上段の右側にある黒っぽいのが45のフィルム。その左が購入した基板。下段は基板の拡大。

LEDの光を散光して均一にするための乳白色のアクリル板。厚さ2ミリの物。あまり薄いとムラが出るし、あまり厚いと暗くなる。今回は2ミリ厚のものを間隔をあけて2枚使用する事にした。これも目的の原版サイズを十分にカバーするものを選ぶ。

LEDは素子に流す電流により輝度が大きく変化する。また過電流には非常に弱いので注意が必要だ。必ず電流制限抵抗を入れて使用するのが良い。今回は輝度を可変して使用する為、電流制限抵抗は万一の為の超過大電流防止用として入れる事にする。そのため抵抗値は若干少なめ(つまり電流は若干多め)に設定する。但し、この抵抗値によってだけでLEDに流れる電流を設定している訳ではない。あくまでも万一の時のおさえである。緑に100オーム、青に82オームを使用。各LEDに流れる電流は20ミリアンペアー以下なのでこの抵抗の電力容量は8分の1ワットとか16分の1ワットの物で十分だ。

LEDに安定した電圧を供給する為の定電圧電源用IC。いわゆる3端子レギュレーターIC。各色の輝度を可変してマルチグレード紙に対応させるため電圧可変型の3端子レギュレーターICを選ぶ。型番LM338T。これも秋月で購入。最大5アンペアーまで流せるすぐれ物だ。データシートも付いていて至り尽せり。おおもとの電源に電池などの比較的電圧変動の多い物も使用できるように、電源電圧を安定にするために1個、緑LEDの輝度可変用に1個、青LEDの輝度可変用に1個の都合3個使用。おおもとの電源にスイッチングレギュレーターなどのように電圧が十分に安定な物を使用すれば緑用と青用の2個で足りる。

発光輝度をモニターする光センサー。写真は左からcds、シリコンフォトセンサー、フォトトランジスター、太陽電池セル、これらの物がセンサーに使えそうで入手が比較的容易な物だ。今回はシリコンフォトセンサーを2個使用する事にした。

今回はおおもとの電源として中古のスイッチングレギュレーターを使用。12ボルト2.1アンペアーの物。レギュレーターICにLM338Tを使用する場合は12ボルトから40ボルトの範囲の直流電源が使用できる。電流容量は2アンペアー以上は必要だ。勿論、自動車用のバッテリーなども使用できる。乾電池の場合はアルカリは厳しいかも。ニッケル水素やニッケルカドミウムならOKだ。ごみ捨て場に放置されている型古PCの電源部をほじくり出して使うのも可だ。これなどは空冷ファンが装備されている上に電流容量は12ボルト5アンペアーとか9アンペアーなんてのがざらなので超うってつけと言える。5ボルト30アンペアーの電源も付いているのでいろいろな機器を自作する場合の電源部にはお勧めである。捨ててあるPCを見つけたら拾えだ!拾って電源部をほじくれ!ほじくった後はもとの場所に捨てろ!、、、責任は取りません。

回路の配線用の電線、それと接続点などの絶縁用の熱縮チューブ。絶縁用の熱縮チューブはどうしても必要なものでは無い。配線用の電線は捨ててあるPCの中にごっそりと使われている。やはりPCを拾うしかないか、、、。町内を一周すれば3台は拾えること確実!

基板を固定したり型枠を組み立てる時に使用する3ミリネジとワッシャーとナット。やはりPCを拾えばそこに、、、。


加工と組立て

まずは蛇の目基板を目的の大きさに切断する。45フィルムを十分にカバーする大きさでフジのカラーヘッドC450のディフューザーボックスと互換可能なサイズ、140ミリかける140ミリの正方形とする。左の写真の左側に写っているのが切断した蛇の目基板、右側にある黒っぽい物が45フィルム。ガラスエポキシ製の基板を切断するときは必ず金属用のノコギリを使用する。ガラスエポキシはガラス繊維を階層状に積層したFRPであるため木工用だと直ぐに歯が駄目になってしまう。ちなみに得体の知れないものや材質不明の物体を加工するときは必ず金属加工用の工具を使用する。これは工作における鉄則である。

切断した蛇の目基板に青色発光と緑色発光の超高輝度LEDを交互に(要は市松模様になるように)ハンダ付けする。ハンダ付けする時の注意点はLEDが基盤に対して常に垂直方向を向くように取り付ける事である(要はまっすぐに取り付ける)。各LEDの足はグランド側の足(電源のマイナス側につながる方の足、購入した時の状態で少し短いほうの足がマイナス側)のみ長い状態で残しておく。プラス側の足はハンダ付け後、短く切り揃えてしまって良い。このサイズの基板だと今の倍の数量のLEDを取り付ける事が出来る。そうすることにより光量のアップがはかれると共に、お小遣いを減らすことも出来る、、、。今回の工作で最も難しく、また性能にも直接関係する作業。それはハンダ付けだ。ちなみにこのハンダ付け。電子工作のベテラン達の間では糠漬け3年、味噌漬け5年、ハンダ付け10年、と言われる程に奥の深い技術だ。左の写真はハンダ付けが完了した基板。25年の実績とキャリアのある僕はハンダ付け界では大阿闍梨と呼ばれている、、、はずだ。

次に、基板を裏返し、長い状態で残しておいた各LEDのグランド側の足(電源のマイナス側につながる方の足)を折り曲げて電線代りに利用して(要は隣のLEDのマイナス側の足にハンダ付けする)全てのLEDのグランド側の足が手をつなぐようにハンダ付けしてつないでおく。続いてプラス側の足に電流制限抵抗をLED1本につき1個づつハンダ付けして行くのだが、電流制限抵抗のリード線はLEDにハンダ付けする方の側を5ミリ位に短く切り揃えておく。この電流制限抵抗の抵抗値は使用するLEDの特性と点灯回路の構成を考慮して選定する。今回は緑色のLEDの方が発光輝度が高いので、その辺りを若干補正する意味も込め、緑のLEDには100オームの物を、青のLEDには82オームの物を使用する。

左の写真は電流制限抵抗のハンダ付けが完了した基板。写真のように基盤に対して垂直に立てた状態でハンダ付けする。電流制限抵抗の上側のリード線は電線代わりに使うのでそのまま残しておく。

電線代わりに残しておいた電流制限抵抗の上側のリード線を緑色のLEDにハンダ付けしたもの同士が手をつなぐようにハンダ付けする。同じく青色のLEDにハンダ付けしたもの同士も手をつなぐようにハンダ付けする。これで緑色のLED、青色のLEDの各回路が出来上がった訳だ。左の写真はハンダ付けが完了した基板。回路としては緑と青が共通のマイナス側、青のみのプラス側、緑のみのプラス側と言う構成になる。ここまで出来上がったら試験的にLEDを点灯してみる。この時は間違っても、直接12ボルトの電源をつないではいけない。電流制限抵抗が付いているので瞬間的に壊れることは無いが、それでも過大電流により数秒でLEDを劣化させてしまう。今回使用のLEDはスペック表から準方向点灯電圧は3.9ボルトなので、4.5ボルト位の電圧の電源(乾電池などで作る)をつなぐか、12ボルトの電源に1キロオームの抵抗を直列に入れた状態で接続する。

緑色のLED、青色のLEDの各回路に実験用電源から約3.8ボルトを接続して点灯させたLED。この電圧での発光量は実際に使用する時の10パーセント位だと思う。100パーセントの発光をさせると眩しくてとても直視出来たものではない。ちなみに100パーセントの発光とは今回使用のLEDの場合、1個に付き20ミリアンペアーの電流を流したときの発光量である。今回の回路で採用した電流制限抵抗値の場合で、印可電圧やく5.9ボルト位でLED1個に付き20ミリアンペアーの電流が流れる。

点灯した状態に乳白色のアクリル板を重ねてみるとLEDの素子のばらつきによる輝度のムラが確認出来る。輝度のムラは無いに越したことはないのだが、ある程度は仕方ない。今回のものは青色の方に若干ばらつきが見られた。輝度のムラの有るLEDで特に輝度の低い物は取り替えるのが良い。今回はそれ程ひどいものは無かった。輝度が低いLEDの電流制限抵抗に並列に数キロオームの抵抗をハンダ付けして補正する。この場合の抵抗値はカットアンドトライで決定して行く。しかし、あまり厳密に行う必要はない。勿論、厳密に行っても良いのだが、たとえば左の写真くらいの輝度ムラならば、補正しないで使用してもアクリル板を二重に使用するため最終的な完成品に輝度ムラは出ない。

左の写真の赤矢印の抵抗が補正のために追加した電流制限抵抗。

次は5センチ角のアクリル板を2枚作る。アクリルを切断するときも金属用のノコギリを使用する。間違ってもカッターナイフ等で切ろうとしてはいけない。一歩間違うと血みどろの週末になってしまう。アクリルカッターなどという便利な物を持っている場合はそれで切るのが良い。それと周囲を覆う白色の板も必要な寸法にカットしておく。これは白い厚紙や薄めの発泡スチロール板が使用できる。今回はごみ捨て場で拾った保冷用の発泡チロール箱をカッターナイフでカットして使用。

ライトボックスとして組み上げる為の型枠になるアルミ部材を必要な寸法に切ってネジ止めするための穴を開けておく。今回使用したアルミ部材はごみ捨て場で拾ったアルミサッシから取り外した1ミリ厚のL型チャンネルだ。賢き者は方もうお分かりのはず。そう、今回の工作のキーワードはごみ捨て場だ!左の写真は左上から時計回りに、完成したLED基板、電線をハンダ付けした光センサー2個、組み立ての為の3ミリネジ類、切断と穴開け加工の完了したアルミ部材。

左の写真のように組み立てる。青と緑の各LEDと光センサーをコントローラーと接続するための電線もハンダ付けしておく。光センサーには電流はほとんど流れないので細くて良いがノイズを拾わないようにシールド線かツイストペアー線が望ましい。しかし、今回は測定輝度値をテスターで読み取るだけなのでシールドが無くても使用可能。青と緑の各LEDの線は各線に1アンペアー近い電流が流れる可能性があるため少し太めの電線を使用する。写真のものは6芯のシールド付き電線を使用した。設備用の電線で外形が8ミリ程のものだ。ごみ捨て場を探したのだが適当なものが無かったので電線屋で購入した。この電線は捨ててある家電品のACコードを青と緑の各LED用に2本、光センサー用に1本の都合3本構成で使用すれば安価に上がる。しかもこれなら拾える!散歩の時はニッパーを忘れずに持って行こう。

光センサーは写真のように小さな基板に取り付けた物をネジ止めすると良い。アルミ部材とショートしないように気をつける。配線は細めの電線をアルミ部材に添わせてセロテープなどで止める。この光センサーの取付け位置は、二枚のアクリル板の間になる位置とする。対角に各1個づつの都合2個取り付ける。本当は各角に各1個づつの都合4個取り付けるのがベストだ。今回はLEDの裸の特性を探るという事も有り、このセンサーでフィードバック制御(クローズドループ制御とかサーボ制御とも言う)はしていない。あくまでも発光輝度値のモニター用だ。この光センサーがLEDの光を受けて発生する電圧をカード型デジタルテスターで測定して発光輝度値の変化を監視しようと言う訳だ。受光面をやや光源側に向けるのがポイントだ。

アクリル板と発泡スチロール板を取り付けてやや完成状態になったコールドライト部。この後、上部に基板部分の蓋となる15センチ角のアルミ板もしくは厚紙などを取り付けてから、補強と遮光を兼ねて、上部と側面の都合5面に、黒のガムテープやパーマセルテープ等を貼り付けてしまう。そこまで出来たらコールドライト部は完成である。

組み立て途中で光センサーの取付け状態をフィルム側(下側のアクリル板側)から見たもの。写真でセンサーの上の方にあるのが光源側のアクリル板。センサーは側面の発泡スチロール板から顔を出す形で、やや光源側のアクリル板に向かって取り付けられている。

周囲を黒テープで覆う前に、動作試験をしてみる。この場合も電源の接続には十分に注意する。基板単体での点灯試験の時と注意点は同じだ。他の注意点として光センサーに間違って通電しないよう注意する。電線は接続したら、その時に直ぐ、名前を付したテープなどで目印を付けておくことだ。これも電気工作をするときの鉄則である。そうでないと組み上がってから「あれっ、この線どこにつながってんだっけ?」てな事になりかねない。

左の写真は上から、青のみ発光、緑のみ発光、青と緑を等分に発光させた時の各状態。

出来上がったコールドライト部をC450のディフューザーボックスの代りに装着してみた状態(C450ヘッドを上から見たところ)。高さがやや低めだがピッタリと収まった(まあ、そう作ってますからね)。

コントローラー部は基本的に3ボルトから5.5ボルトまで可変可能なタダの可変電源装置なので作り方の説明は割愛します。要は青用と緑用に二つの独立した電流容量1アンペアー程の可変電源装置を用意すれば良いわけです。実験用電源装置などと名打って秋月電子通商などから詳しい解説資料付きで発売されているキットを2組購入するのが手っ取り早いかも。光センサーからの線には安価なカード型デジタルテスターをつないで電圧を監視するのが良いと思う。これも秋月で2000円前後で売っている。ここで、またも賢き者は気付いたはず。今回の工作の第二のキーワードは秋月だ!


使用した結果

肝心の性能だが、テストとしてステップタブレット(グレースケールが記録されているネガフィルム。濃度の物差しとも言える。コダックから発売されている。結構高価なフィルムだ)をフジのバライタ紙レンブラントV-F2とオリエンタルのバライタ紙ニューシーガルVC-FB2に焼いてみた。光量の決定は光センサーからの電圧値が常に一定になるように、緑と青のLEDに流す電流(つまりLEDに印可する電圧)の組み合わせを調整した。このバランスを可変することにより光量が一定の状態で緑と青のバランスが可変出来る訳だ。つまり光量が一定の状態でグレード調整が出来ると言うことだ。

テストでの現像条件は全て、現像液はイルフォード処方のID-62(PQタイプの標準的微粒子現像液)で液温20度、2分現像とした。

光量であるが、これはC450にで元々使用している24V250Wのハロゲン電球に比べて、何と約4段暗い!

と言っても、C450の光量はかなり強めで、六つ切や四つ切を使用する場合、光量が強すぎて使いづらい面が有る。今回試作のコールドライトでブローニー645サイズの原版を六つ切のニューシーガルVC-FB2にフルフレームで伸した場合(伸し倍率やく3.7倍)、伸しレンズ、ロダゴン80ミリF4を2段絞ってF8で使用、このとき標準露光タイム55秒であった。

レンブラントV-F2を使用したベタ焼きのテストでは、伸しレンズ、フジノン135ミリF5.6を開放で使用、ヘッド位置は伸し倍率にして5倍の位置で使用、この時の標準露光タイム27秒であった。

どちらも、緑と青の光量バランスを変えて数種類焼いてみたが、グレード可変による露光タイムの変動はほとんど無いと言ってよい。

グレード可変の範囲は、緑のみの発光での約1号から、青のみの発光での約3号半までが可変可能範囲のようだ。この範囲内なら連続的に号数調整が出来、それによる露光タイムの変動も無いようである。硬調側が約3号半までと言うのは、やはり青色発光のLEDが発光域410nmから530nmでピークが470nmと言う特性であるため仕方ないのであろう。秋月では1本200円で近紫外線発光する超高出力LEDなるものも販売されていたが、これなどを青色LEDの代りに使用すると、より硬調まで可変出来るのであろう。安くなるのを期待したいところだ。実用上は、1号半から3号半まであれば殆ど事足りるので、グレード可変の範囲に付いては、このままでも問題はないと思う。

繰り返し精度に付いては、フィードバック制御していないにもかかわらず、かなり高いものが得られるようだ。LEDは電圧さえ(もしくは電流さえ)しっかり安定しておけば、発光輝度はかなり安定しているようだ。実用上、フィードバック制御は必要無いと思われる。信頼性の点からも必要ないものは付けないべきだ。今回のようにセンサーによる光量の監視が出来ればそれで十分だし、使いやすい。コントローラーに電圧計を組み込んでしまうのがよさそうだ。

光量不足については、現状でもLEDは基板に倍の数量取り付ける事は出来るため、そうすることにより光量アップをはかることは可能だ。小型の冷陰極管との複合型にするのも光量アップやグレード可変の範囲の拡大には有効な方法だろう。レンブラントVなどの高感度なペーパーを使用し尚且つ六つ切あたりを常用サイズにするならば今回の試作品でも十分実用になる。


その後の改良

コントラストレンジの硬調側への拡大の為の実験として、近紫外線発光LED9個を、現在の青色LED回路に並列接続で増設してみた。青色81個に対してたった9個の増設だが約半号くらい硬調になったようだ。今回増設したLEDは、メーカーは紫外線発光LEDとして販売しているようだが、特性的には発光の中心波長400nmなのでスカート部の長波長側が可視光の紫、短波長側が近紫外線から紫外線域と言う物だ。

今回試作の基板には、あと50個くらいのLEDを取りつけるスペースは有るので、ここに近紫外線発光LEDを増設すればかなりの硬調(多分5号UP)も可能になると思う。その場合は青色LED回路に並列接続はせず、近紫外線発光LEDのみの単独回路として、コントローラー側に単独で近紫外線発光LEDを調光するための可変電源装置を用意した方が使い易いと思う。また、新たに製作するのであれば、青色LEDのかわりに近紫外線発光LEDを使用すれば良いと思う。多数の近紫外線発光LEDを使用した場合の注意点としては、ピント合わせの為、ピントルーペをのぞく時の目に対する保護対策は必須であろう。ピント合わせ用に近紫外線発光LEDのみoffれるスイッチを設けるとか、ピントルーペの接眼部にUVフィルターを取り付けるとか、、、。暗室で雪目にはなりたくないものである。


最終的な改良とデータ

近紫外線発光LEDの増設でかなりの硬調化が望めることが分かったので、最終的に48個の近紫外線発光LEDを増設する事にした。また、光量不足を補う為、コントローラー部の出力アップも同時に行う。これまでの試作品の試用にて何とか実使用できそうな感触を得られたので各部の作りは有る程度長期の使用にも耐えられるものにした。ヘッド部の側面の構成材料を発泡スチロール板から1ミリ厚のアルミ板に変更(発泡スチロール板は紫外線で劣化の可能性有りと思えた為)、これで強度的にも十分長期使用に耐えられる物になった。このアルミ板の選定においては、表面の劣化による反射率の変化防止の点から、内側になる面にはアルマイト処理が施されているものが望ましいだろう。また、内面側の表面処理は、鏡面よりヘアーラインなどのつや消しタイプの方が、光の拡散ムラ防止の点から望ましいように思う。外装をアルミ板化することによる重量の増加は有ったが、それでも、C450に当初から付属のオリジナルディフューザーの3分の2くらいの重さである。光量モニター用のセンサーも四隅に合計4個を設置し直列接続とした。ヘッド部とコントローラー部をつなぐケーブルは、LED用とセンサー用を別のケーブルとし、センサー用には細めのシールド電線を使用。尚、コントローラー部のセンサーの検圧端子に200キロオームの終端抵抗を付けた。これは、ノイズの影響を避けるためと、計測する電圧計の内部抵抗による表示値誤差をキャンセルする為である。コントローラー部のその他の改良は、光量アップの為の出力電圧の上昇(各LEDに最大18ミリアンペアー流せるようにした)。グレードコントロールをよりきめ細かく設定できるように緑、青、近紫外線を単独の回路で調整可能にし、調整用のボリュームも10回転式の精密な物に取り替えた。

以上が最終的な改良の内容である。基本的な構造や考え方は当初の物と変りは無い。下に改良後の回路構成や寸法などを、最終改良後のデータとしてPDFファイルで掲載する。

最終改良後のデータ(PDFファイル32Kバイト)→プリントデータ

 

これで今回の、超高輝度LEDを使用たマルチグレード紙対応のコールドライトの試作の工作編は一区切りとし、実使用を通しての各種データの収集に移る事にする。今後、少なくとも一年以上使用して見た上で、LEDの長期使用における安定性、更なる改良の必要性、機能アップの方向性などを探って行きたい。

光源をLED化したことによりハロゲンランプから出る熱と冷却のためのファンの音から開放された。それだけでも得るものは大きい。騒々しくてくそ熱い暗室では繊細な作業は難しい。それが深夜の作業ならなおさらである。

リターン